『バーナデット ママは行方不明』自分探しで南極へ! 日常から離れて見える本来の“私”

『バーナデット』日常から離れて見えるもの

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、仙台旅行の余韻が抜けない花沢が『バーナデット ママは行方不明』をプッシュします。

『バーナデット ママは行方不明』

 人はなぜ旅をするのか。100人いたら100通りの答えがあると思います。

「自分と頭痛の種の距離は、物理的な距離と比例する。だから、ぼくは旅行が好きだ」

 オードリーの若林正恭さんは、キューバへの一人旅を決めた理由をこのように書いています(※)。筆者も一人で海外旅行をする程度には旅好きですが、その目的は「どこかに行くこと」よりも「今いる場所から離れること」にあるような気がします。

 今回紹介する映画は、日常から距離を置こうとした結果、南極まで到達してしまった女性が主人公です。邦題に「ママ」と入っているので「育児に疲れたお母さんの話」という印象を受けるかもしれませんが、本作のターゲットはもっと広く、仕事で悩んでいる人や創作活動をしたことがある人にはきっと刺さる内容になっています。

 バーナデットはかつて若き天才として、世界に名を轟かせた建築家。しかし、娘が生まれてからは仕事を辞め、育児に専念してきました。彼女は、娘との関係は良好な一方、人付き合いが苦手で、ママ友のコミュニティにうまく馴染めません。さらに、不眠症や近隣トラブル、ネット詐欺など、さまざまなストレスが重なった結果、家を飛び出して南極行きの船に乗り込みます。

 昼も夜もなく、一面真っ白な南極で、バーナデットが「私はいったい誰?」と自問自答するシーンが印象的でした。自宅から遠く遠く離れたことで、彼女は久しぶりに自分が“創造者”であることを思い出します。南極点の観測基地が建て替えられることを知り、そのデザインを妄想しながら、瞳にきらきらと光が宿っていくさまは、創作をしたことがある人ならきっと身に覚えのある感覚でしょう。

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