映画『Dr.コトー診療所』は今こそ続編を作るべき作品だった 現実とリンクした16年の月日

『Dr.コトー診療所』の“続編”をもう一度

 そして、16年という時間の流れは、本作のテーマをより切実な現代日本の問題として蘇らせた。劇中で元漁労長(漁業協同組合漁労長)のしげさん(泉谷しげる)は、この島は「日本の最先端」で、少子高齢化も過疎化も日本の未来なのだと語る。かつて『Dr.コトー診療所』で描かれた離島医療の問題は、高齢化が進み、少子化が急速に進む日本において、急務の問題となっている。

 この離島医療の困難を、本作では、コトー先生の人徳と卓越した医術によって乗り越えてきた。そんなコトー先生の献身的な振る舞いこそがヒューマンドラマとしての本作の最大の魅力だったのだが、今回の映画では、東京からやってきた新米医師・織田判斗(髙橋海人)にコトー先生の「良心と自己犠牲に、島民自体が寄りかかる構造自体に問題があるんじゃないか」と、辛辣な問題定義をさせている。

【予告】映画『Dr.コトー診療所』

 一方、近隣の島々では診療所の統廃合がおこなわれており、本土の病院で包括して診療するプロジェクトが進んでいた。コトーも拠点病院の指導医になって、これまで島でやってきた離島医療のノウハウを他の医師に伝え、後進を育成してほしいと相談されていた。

 その意味で、今回の映画は、物語の根幹にある問題に深く踏み込んでいたと言える。最終的に劇中では、台風が直撃したことで怪我をした無数の島民をコトー先生たちが献身的に看病して困難を乗り越えようとする姿が描かれる。

 自己犠牲を厭わないコトー先生の英雄的な振る舞いは感動的だったが、同時に『Dr.コトー診療所』が抱えこんでしまった限界を、あえて露呈させているようにも見えた。

 劇中では、損な役回りとなってしまった新米医師の判斗だが、彼の言うことは極めて真っ当だ。映画には感動したものの、コトー先生のような医師の自己犠牲に依存しない離島医療の新たな仕組みが生まれる瞬間を描かないと、本作は終われないのではないかと感じた。

 “新たな仕組み”を描くためにも『Dr.コトー診療所』はもう一度、続編を作るべきである。

■リリース情報
映画『Dr.コトー診療所』
Blu-ray&DVD発売中
Blu-ray&DVDレンタル中

○Blu-ray豪華版[2枚組:本編Blu-ray+特典Blu-ray]
価格:7,920円(税込)
品番:PCXC-50171
本編:135分+映像特典:303分

<映像特典>
予告編集
TVCM集
イベント映像集
公開記念特番「Dr.コトー診療所 16年ぶりの同窓会」
スペシャル・メイキング「16年の月日とメイキング」
キャストインタビュー

<封入特典>
スペシャル・フォトブック(44P)

○DVD豪華版[3枚組:本編DVD+特典DVD1+特典DVD2]
価格:6,930円(税込)
品番:PCBC-61800
本編:135分+映像特典:303分

<映像特典>
予告編集
TVCM集
イベント映像集
公開記念特番「Dr.コトー診療所 16年ぶりの同窓会」
スペシャル・メイキング「16年の月日とメイキング」
インタビュー集

<封入特典>
スペシャル・フォトブック(44P)

○Blu-ray通常版[1枚組:本編Blu-ray]
価格:5,170円(税込)
品番:PCXC-50172
本編:135分+映像特典

<映像特典>
予告編集
TVCM集

○DVD通常版[1枚組:本編DVD]
価格:4,180円(税込)
品番:PCBC-52766
本編:135分+映像特典

<映像特典>
予告編集
TVCM集

出演:吉岡秀隆、柴咲コウ、時任三郎、大塚寧々、髙橋海人(King & Prince)、生田絵梨花、蒼井優、神木隆之介、伊藤歩、堺雅人、大森南朋、朝加真由美、富岡涼、泉谷しげる、筧利夫、小林薫
監督:中江功
脚本:吉田紀子
原作:山田貴敏『Dr.コトー診療所』
音楽:吉俣良
主題歌:中島みゆき「銀の龍の背に乗って」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
©山田貴敏©2022 映画「Dr.コトー診療所」製作委員会
公式サイト:https://coto-movie.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/coto_movie
公式Instagram:https://www.instagram.com/coto_movie/
Blu-ray&DVD特設サイト:https://movie-product.ponycanyon.co.jp/item141/

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