映画『Dr.コトー診療所』は今こそ続編を作るべき作品だった 現実とリンクした16年の月日

『Dr.コトー診療所』の“続編”をもう一度

 中江功監督の映画『Dr.コトー診療所』のソフト化&配信がスタートした。

 2022年の12月に劇場公開された本作は、テレビドラマ『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)シリーズの16年ぶりの続編である。山田貴敏の同名漫画(小学館)を映像化した『Dr.コトー診療所』は、沖縄県八重山列島にあるとされる架空の島・志木那島の診療所に勤めるコトー先生こと、五島健助(吉岡秀隆)と島の人々の交流を描いたヒューマンドラマ。沖縄の大自然をバックに、離島医療の難しさと、それでも諦めずに島の人々を救おうとするコトー先生の姿は、視聴者に深い感動を与えた。

 大自然を背に展開されるヒューマンドラマというと、21年の歳月が描かれた倉本聰脚本の『北の国から』(フジテレビ系)が一番に思い浮かぶ。

 『北の国から』で黒板純を演じた吉岡秀隆が主演を務め、倉本聰の主宰する富良野塾の門下生だった吉田紀子が脚本を担当した本作は、北海道の富良野を舞台にした『北の国から』と対になる、沖縄の離島を舞台にした“南の国から”とでも言うような作品だった。

 2003年に第1期のテレビドラマが放送された『Dr.コトー診療所』は、2004年に特別編とSPドラマが放送され、2006年に第2期のテレビドラマが放送される人気シリーズとなった。そして今回、久しぶりの続編が映画として作られたのだが、人気シリーズの続編とはいえ、16年ぶりの新作というのは極めて異例である。

 しかし、劇場映画となった『Dr.コトー診療所』を観ると、これは今こそ続編を作るべき作品だったのだと感じる。

 連続ドラマが放送された後、数年ごとにSPドラマが放送された『北の国から』は、子役だった吉岡秀隆と中島朋子が大人に成長していく姿を親目線で見守るドラマへと変わっていった。『Dr.コトー診療所』も映画化されたことで、白髪になったコトー先生を筆頭に、各登場人物が年齢を重ねた姿が描かれ、16年という時間の流れ自体が重厚な物語を生み出している。

 特にそれが強く現れていたのが、漁師の原剛利(時任三郎)の息子・剛洋(富岡涼)だ。剛洋はコトーに憧れ、医師になるため東京の私立大学に入学したが、映画版では医大に通っていた剛洋が剛利の怪我をきっかけに久々に島に戻ってくる場面が描かれる。少子化、過疎化が進む村において、子供の剛洋が成長していく姿は大きな希望として描かれており、いずれはコトーの後を継いで、島の診療所を引き継ぐのではないかと期待されていたが、彼がある事件に巻き込まれていることが次第に明らかになっていく。

 今回、剛洋を演じる富岡涼はすでに俳優を引退していたが、今回の映画のために俳優業に復帰し、体重を15キロ減量して撮影に臨んだという。そんな富岡と成長した剛洋の姿は見事にシンクロしており、フィクションでありながらドキュメンタリーを観ているような面白さが宿っていた。年を重ねた姿を違和感なく描けるのは、劇中の時間の流れが現実とリンクしている現代ドラマならではの魅力だろう。

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