『ハヤブサ消防団』を成立させた中村倫也の巧みな“受け”の芝居 “ジャンルレス”な面白さ
しかしこれらの、一見人懐っこく面白おかしい登場人物たちにも、どうやら裏の顔がありそうだ。「人物が多面的である」というのは、面白い物語の必須条件と言える。人も、物ごとも、光を当てる角度によって見え方が違ってくる。村の鼻つまみとして扱われ、連続放火犯の疑いが晴れぬまま殺されてしまった浩喜は、太郎にはシャイな笑顔を見せ、家庭菜園で採れた野菜をくれた。視聴者としてはすっかり愛着がわいてしまっている消防団の面々とて、今後の展開で裏切ってくるかもしれない。しかしそれが怖いと同時に、少し楽しみでもある。
「田舎」だからこそ際立つ、人間関係のスリリングさが利いている。太郎の生業である「作家」は、「人間の本質」を見定める仕事だ。このドラマは、悲しくも可笑しい「人間の性」を深掘りしていきそうな予感がする。
さて物語は、ついに消防団員の部長・賢作の家にも放火事件が起き、防犯カメラに犯人の姿が映し出されたところで第3話が閉じた。現場から逃げ去る犯人の車の助手席には、なぜか消防団のキャップ。手袋を外した犯人の指は細かった。そしてラストシーンでは、謎の老婆に寄り添う彩(川口春奈)が、神棚に飾られた“シャクナゲの美女”の写真を見上げている。
現在のところ“表立って”怪しそうなのは、東京から移住してきた映像ディレクターで、なぜか浩喜の遺体発見現場の池にシャクナゲの花を投げていた彩と、どうやらトラブルの火種であるソーラーパネルの設置を住民に勧める営業マン・真鍋(古川雄大)だが、きっと一筋縄ではいかないのだろう。実行犯の裏で糸を引いている人物や、もっと深いところに大きな「闇」が隠れているに違いない。第4話では、さらに事件の真相に迫る新たな動きがありそうで、今後の展開から目が離せない。今からでも遅くない。この「カオス」で「ジャンルレス」なドラマに、ぜひ身を預けてみてほしい。
■放送情報
『ハヤブサ消防団』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:中村倫也、川口春奈、満島真之介、古川雄大、岡部たかし、梶原善、橋本じゅん、山本耕史、生瀬勝久、麿赤兒、村岡希美、小林涼子、金田明夫、大和田獏
原作:池井戸潤『ハヤブサ消防団』(集英社)
脚本:香坂隆史
演出:常廣丈太(テレビ朝日)、山本大輔(アズバーズ)ほか
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:飯田サヤカ(テレビ朝日)、木曽貴美子(MMJ)、小路美智子(MMJ)
制作協力:MMJ
制作著作:テレビ朝日
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