『どうする家康』岡田准一が初めて見せた“弱さ”の芝居 信長×家康の愛憎入りまじる感情
しかし妻子の死を悼む家康に信長の思いが届くはずもない。信長の背中を見る家康のまなざしは冷ややかだ。信長が家康に心を許していても、家康の心は遠のくばかりだ。家康は「確かに、わしは弱い。だが、弱ければこそできることがあるとわしは信じる」と自らの信念を明かすと、「弱き兎が狼を喰らうんじゃ」と歯向かった。
それでも、信長は家康に心を傾けている。
「本当にお前が俺の代わりをやる覚悟があるなら、俺を討て」
「待っててやるさ」
家康を見つめる信長の目元の表情はあたたかく、実の弟のようにかわいがってきた家康の成長を誇らしく思う、兄のように映る。「待っててやるさ」という声色は、これまでで最も優しく響いた。
直々に「俺を討て」と言われ、家康は何を思ったのだろうか。家康はその場を無言で立ち去った。信長は深くため息をつくと、誰もいない座敷に戻る。足取りこそ悠々としているが、ふと孤独を感じたのか、うつむいたまま立ち止まった背中はもの悲しげに感じられた。
信長の孤独は埋まらないまま、「本能寺の変」を迎える。
■放送情報
『どうする家康』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:松本潤
脚本:古沢良太
制作統括:磯智明
演出統括:加藤拓
音楽:稲本響
写真提供=NHK