『どうする家康』松本潤の変貌に驚くばかり 新たな展開を予感させる「信長を殺す」の一言
『どうする家康』(NHK総合)第26回「ぶらり富士遊覧」。瀬名(有村架純)と信康(細田佳央太)を失い、家康(松本潤)は変わってしまった。忠勝(山田裕貴)ら家臣の一部は、家康が信長(岡田准一)を恨む様子もなく従順に付き従うのを理解できず、不満を抱く。そんな中、家康は安土へ戻る道中に信長を接待したいと申し出た。前代未聞の富士遊覧の饗応が始まる。
物語冒頭、家康は武田方が降伏を示す書状を読みもせず火の中にくべた。義を重んじる忠勝は無益な殺生をすべきでないと家康に異を唱えるが、家康は淡々とした物言いで「無益ではない。やつらが無惨に死ねば死ぬほど助けを送れなかった勝頼の信用はなくなり、武田は崩れる」とはねのける。家康は平然と「やつらを皆殺しにせよ」と述べた。亡き妻・瀬名から「弱虫泣き虫はなたれの殿」と呼ばれていた家康からは考えられないほど、冷酷な判断だった。信頼できる家臣たちを前にしても、その声色に気力は感じられず、その目に光はない。
忠勝は信長に逆らう様子もなく、二言目には「上様」と口にする家康を許しがたく、「信長の足をなめるだけの犬に成り下がったのやもしれん」と吐き捨てる。確かに、信長に対する家康の言動は信長に媚びへつらっているようにも見える。例えば、家康は信長をもてなす中で、「厭離穢土欣求浄土」の旗印が陰気くさいとこき下ろされ、三河の地を田舎くさいと言われ、兄弟のように育った今川氏真(溝端淳平)を無能と断じられるも、家康は信長の言葉を聞き入れ、恭しく頭を下げたうえ、自ら進んで「海老すくい」を陽気に踊り出した。
しかし、家康は決して“信長の足をなめるだけの犬”に成り下がったわけではない。家康は誰にも、家康が信頼を置く家臣たちの前であっても、心の内を見せなくなっただけだ。