若さを描く『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』 動きまくるアニメの快感

『アクロス・ザ・スパイダーバース』の快感

 とはいえ一番目立っているのは、やはり主役のマイルスとグウェンである。この2人の思春期的なやり取りたるや。共に同じ秘密と苦悩を抱え、お互いを支え合いながらスパイダーマンの運命に立ち向かっていく姿は思わず応援したくなる。作っている側の「ここはキメるぞ~!」という気持ちがビシバシ伝わってくる、逆さまの景色を2人で並んで眺める姿は、ぐるんぐるん動く映像が連発する本作で、数少ない静かなシーンとして強烈な印象を残す。観ているこっち的には「世界の滅亡とかさておき、いいからお前ら付き合えよ」とクラスの気のいい同級生になってしまうこと請け合いだ。定められた未来を少年少女がブチ壊そうと奮闘する話は、いつだって魅力的なものである(無論それに失敗した過去を持つ悪い大人もまた同様に魅力的である。ミゲルは疲れ切った感じがイイですね)。そして、そんな若さを描く物語には、目で追い切れないほどのスピーディーなアクションがよく似合う。

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース

 唐突に私事になるが、私は『あしたのジョー』などで有名な故・出﨑統監督が好きである。出﨑監督といえば、止め絵に台詞が被さる演出で有名だ。そんな出﨑っ子なので、「あえて動かさないのもアニメの魅力なり!」と刷り込まれているのだが、そんな私でも本作には圧倒された。めちゃくちゃに動きまくるアニメの快感を楽しみたい方、少年少女の青くてパワフルな反抗の物語をアクションと共に楽しみたい方、劇場へGOである。

■公開情報
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』
全国公開中
監督:ホアキン・ドス・サントス、ケンプ・パワーズ、ジャスティン・K・トンプソン
脚本:フィル・ロード&クリストファー・ミラー、デヴィッド・キャラハム
声優:シャメイク・ムーア、ヘイリー・スタインフェルド、ジェイク・ジョンソン、イッサ・レイ、ジェイソン・シュワルツマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ルナ・ローレン・ベレス、ヨーマ・タコンヌ、オスカー・アイザック
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
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公式サイト:https://www.spider-verse.jp 
公式Twitter:https://twitter.com/SpidermanMovieJ

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