『合理的にあり得ない』には“負の要素”も 天海祐希が依頼人に向けるあたたかな眼差し
人間には他の生き物にはない醜い部分や恐ろしい部分もあるが、涼子が依頼人に向けるあたたかな眼差しには愛情深く、信頼できる人間も存在することを改めて感じさせられる。涼子の仕事ぶりを一番近くで見ている貴山も同様のことを感じているはずだ。女性を特に苦手とし、人と接することが苦手な貴山は涼子に「生き物として好き」と第8話で告白しているが、彼は涼子との出会いで好意の対象とさえなりえる人間が存在することに気付くことができた。
涼子は傷害事件の真相を明らかにすることを諦めていない。第9話で、諌間に探偵に転身した理由を問われると、「生きるためにはこれしかなかった。それにこの仕事、調べるのにいろいろと都合がいいの。私、まだ諦めてないから。私が椎名さんを殴る理由なんてない。必ず真実を見つける」と答えている。
トラブルが大きくなることを恐れるあまり真相の追及を好まず、曖昧なままにしておくことを選ぶ人も少なくないだろう。涼子についても事件を詮索しない方が平穏な暮らしを保てるといった見方もできるが、彼女はそれでも事件の真相を明らかにすることを望む。それだけではなく、涼子はわなにはまった自分も愚かであったと考えており、自身を被害者として位置付けているわけでは必ずしもない。
嘘やごまかしを嫌い実直に生き、自分の行動の一つ一つに責任をもつ涼子の姿は、難儀な現実社会の中で自分の生き方を見失いかけている私たちの心に響くものがある。
第10話ではベールに覆われていた傷害事件の真相の大部分が明らかになった。涼子に催眠をかけた人物の正体や闇バイトの元締めの氷川玲児(阿部亮平)がこの事件に深く関係していたこと、さらには傷害事件の首謀者だろう男の正体も明かされた。本作はどのような結末を迎えるのか。
■放送情報
『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:天海祐希、松下洸平、白石聖、中川大輔、丸山智己、仲村トオルほか
原作:柚月裕子『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(講談社文庫)
脚本:根本ノンジ
演出:光野道夫、二宮崇、倉木義典
プロデューサー:萩原崇、清家優輝
音楽:眞鍋昭大
制作協力:ファインエンターテインメント
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト: https://www.ktv.jp/arienai/
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