『合理的にあり得ない』が生む心地良さ 万能コメディエンヌ白石聖が物語をかき回す

『合理的にあり得ない』が生む心地良さ

 『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』(カンテレ・フジテレビ系)は説明が難しいドラマだ。探偵ものだけどコメディで、主人公自身が最大のミステリー。ホームドラマやお仕事ものの要素もあって、1話の中でそれらが自然に融合しているのが本作である。

 6月12日放送の第9話は、久実(白石聖)フィーチャー回だった。「不動のレギュラーでありながら奥ゆかしく、その割に存在感しっかりめの久実が縦横無尽の活躍を見せる」と、なりそうでならないのが『合理的にあり得ない』である。探偵見習いなのに探偵のセンスに欠けるお約束の設定で、シリアスなトーンをまたたく間にズッコケさせて退場。ドジっ子枠と思われた久実には再登板のチャンスが訪れた。

 空回りするくらい久実がやる気を出したのは理由があった。依頼人の澤本香奈江(入山法子)は、元夫の安生健吾(高橋光臣)から息子の親権を取り戻したいと言い、久実は身を乗り出してその話を聞く。モラハラ気質な父親の手を離れて、大好きなお母さんと暮らせるようにおせっかいを焼く久実は、10歳の直人(大平洋介)にかつての自分を重ねていた。

 しかし、せっかくの久実のやる気はことごとく裏目に出てしまう。安生にケンカを売る、街中で直人に声をかけて不審者と間違われるなど、ドラマ的な見せ場を連発して順当に自宅待機を命じられる。そうなると、ボスの涼子(天海祐希)と貴山(松下洸平)が出ばってきて、あの手この手でアプローチするのはおなじみの展開である。

 白石聖については、今年だけですでにドラマ出演が5作、そのうち『とりあえずカンパイしませんか?』(テレビ東京系)、『ファーストステップ2~世界をつなぐ勇気の言葉~』(BSよしもと)で主演、本作で主要キャラを演じる活躍ぶりだ。目を引くルックスと対照的に演技の守備範囲は広く、正統派ヒロインからサスペンス、ホラー、コメディまで柔軟に対応する。近年際立っているのはコメディで、アニメ『銀魂』好きを公言するセンスは本作でもいかんなく発揮されている。

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