『美女と野獣』を名作たらしめるアラン・メンケンの音楽 リプライズが表す心の機微
また、「How Does A Moment Last Forever」(時は永遠に)は劇中においてモーリスとベルがそれぞれ異なるアレンジで歌う、いわゆるリプライズ(冒頭で演奏したフレーズやテーマを後で繰り返すこと)であることにも注目したい。
『モアナと伝説の海』(2016年)では、祖母を亡くした主人公モアナが大海へと漕ぎ出すシーンで主題歌である「どこまでも ~How Far I'll Go~」を、『アナと雪の女王』(2013年)では氷の城を作り上げたエルサにアナが語りかけるシーンで「生まれてはじめて」を。ディズニー映画におけるリプライズは、『リトル・マーメイド』でエリックに出会ったアリエルが「Part Of That World(いつか行きたいあの世界)」を「Part Of Your World(あなたのいる世界)」と歌ったように、主人公の成長や感情の変化を兆すための重要な要素として描くことが多い。それはミュージカルとして上演されることの多いディズニー作品の特長ともいえる舞台的な演出だ(メンケンは音楽づくりにおいて、舞台でも映画でも同一の製作方法をとっていると語っている)。
ディズニーの映画音楽がいつまでも老若男女問わず時代を超えて心を揺さぶるのは、空間の広がりを持たせた演出と、舞台・映画問わず観客の情動に働きかけるテクニックがいかんなく発揮されているからとも考えられる。
キャラクターが“そこに確かに生きている”ことを感じさせる音楽で、作品を名作たらしめるアラン・メンケンの音楽と、それを感情豊かに歌い上げる俳優、アーティストたち。ぜひ、『リトル・マーメイド』に続いて『美女と野獣』でも、彼が世に生み出した素晴らしく繊細で美しい音楽を堪能してほしい。
■放送情報
『美女と野獣』
日本テレビ系にて、6月9日(金)21:00~23:19放送 ※放送枠25分拡大
監督:ビル・コンドン
製作:デビッド・ホバーマン(p.g.a.)、トッド・リーバーマン(p.g.a.)
脚本:ステファン・チボスキー、 エヴァン・スピリオトプロス
製作総指揮:ジェフリー・シルバー、 トーマス・シューマッハ、 ドン・ハーン
撮影:トビアス・シュリッスラー(ASC)
プロダクション・デザイン:サラ・グリーンウッド
編集:バージニア・カッツ(A.C.E.)
衣裳:ジャクリーヌ・デュラン
スコア/歌曲・作曲:アラン・メンケン
作詞:ハワード・アシュマン、 ティム・ライス
音楽プロデューサー:マット・サリヴァン
スコアアレンジ:クリストファー・ベンステッド
歌曲アレンジ&指揮:マイケル・コザリン
出演:エマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス、エマ・トンプソン、ケヴィン・クライン、ルーク・エヴァンス、ジョシュ・ギャッド、ユアン・マクレガー 、イアン・マッケラン 、オードラ・マクドナルド、ググ・バサ=ロー、ネイサン・マック
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