『リトル・マーメイド』配役へのバッシングを吹き飛ばす好スタート 北米と海外で反応差も

『リトル・マーメイド』北米で好スタート

 5月の最終月曜日は、北米では祝日の「メモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)」だ。ちょうど1年前にはトム・クルーズ主演『トップガン マーヴェリック』(2022年)が公開され、金曜日~月曜日の4日間で1億6051万ドルというメモリアルデーの歴代記録を樹立した。

 あれから早くも1年、5月26日~28日の北米週末興行収入ランキングで首位に輝いたのは、ディズニーによる実写映画版『リトル・マーメイド』。3日間で9550万ドルを記録し、月曜日までの4日間で1億1750万ドルを稼ぎ出す見込みだ。業界での「1億2000万ドル超え」との予測にはやや及ばなかったが、メモリアルデーとしては歴代第5位という上々のスタート。日曜・月曜の数字次第では事前予想に到達する可能性も残されている。

『リトル・マーメイド』©2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 『メリー・ポピンズ リターンズ』(2018年)などのロブ・マーシャル監督が、同名アニメーション映画を実写リメイクした本作には、アリエル役に新鋭ハリー・ベイリーを抜擢。ハビエル・バルデム、メリッサ・マッカーシー、ジョナ・ハウアー=キング、ダヴィード・ディグス、オークワフィナら豪華キャストの起用も話題を呼んだ。

 アリエル役に黒人女優をキャスティングする選択は、ディズニーが積極的に取り組み続けるレプリゼンテーション重視によるもので、早くから世界的に大きな賛否両論を呼び、ベイリーには心ない誹謗中傷も寄せられている。しかし、アリエル役としてのベイリーのパフォーマンスは非常に高い評価を得ており、一連のバッシングが北米興行に大きな影響を生むことはなかった(それどころか、まぎれもなくヒット作としての滑り出しだ)。

 北米において、観客の男女比は女性68%・男性32%。人種・民族構成は黒人35%、白人33%・ラティーノ23%・アジア系ほか9%となった。年齢層は全体の4分の1が25歳~34歳だという。

『リトル・マーメイド』©2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 The Hollywood Reporterによると、ディズニーの内部では、ベイリーの起用に対するバッシングが北米興行に特段影響しないことはあらかじめ予測済みだったとのこと。一方、海外市場に影響が生じる可能性はあると想定されており、これは残念ながら的中してしまった。海外51市場の興行成績は6830万ドル(3日間)にとどまり、先週公開の『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(84市場2億5140万ドル)と比較すればその差は歴然だ。

 特に痛手だったのは、大手市場である中国での初動成績が250万ドルにとどまったことで、最終成績も400万ドルほどと予想されている。そのほか、優れた興行収入を記録したのはメキシコ(850万ドル)、イギリス(630万ドル)、イタリア(470万ドル)、ブラジル(400万ドル)、オーストラリア(400万ドル)だ。日本では6月9日公開予定、どんなスタートを切ることになるだろうか。

 実写版『リトル・マーメイド』の世界累計興収は3日間で1億6380万ドル(4日間では1億8580万ドルの見込み)。製作費は2億5000万ドルのため、北米市場を主なターゲットとするにせよ、黒字化に至るには現状の勢いをまだしばらく維持する必要がある。Rotten Tomatoesでは批評家スコア67%・観客スコア95%との評価で、観客の支持は上々だ。

『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』©Universal Studios. All Rights Reserved.

 また、前週1位の『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』は2週目で第2位に下落。3日間で2302万ドル、前週比-65.7%という大幅下落ぶりは、本シリーズもファンの需要に依存している現状を浮き彫りにした。米国興収は1億795万ドル(5月28日時点)と伸び悩んでいるが、中国では国内興収1億1010万ドルを記録するなど、海外市場の猛烈なファイヤーブーストを受け、公開後12日間で世界累計興収5億ドルの大台を突破。2023年公開作品の第3位となった。

 第3位『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』は、3日間で1995万ドルを記録し、前週比-38.4%という粘り強さをキープ。メモリアルデーの5月29日には北米興収3億ドルを超える見込みであるほか、すでに世界興収は7億ドルを突破した。

THE MACHINE - Official Red Band Trailer

 そのほか、今週はメモリアルデーとあって新作映画が多数登場。第5位には『キアヌ』(2016年)のピーター・アテンシオ監督によるアクションコメディ『The Machine(原題)』がランクインした。“ザ・マシーン”の愛称を持つスタンダップコメディアン、バート・クライシャーの持ちネタを映画化したもので、クライシャー自身が本人役で主演。『スター・ウォーズ』シリーズのルーク・スカイウォーカー役で知られるマーク・ハミルが父親役を演じた。

 第6位のロバート・デ・ニーロ出演『About My Father(原題)』も、同じくスタンダップコメディアンのセバスティアン・マニスカルコが自身の父親との関係を映画化したコメディ。マニスカルコが主演・脚本を兼任した。

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