『どうする家康』松本潤×岡田准一の凄まじい緊張感 亀姫役・當真あみのはかない笑顔も
『どうする家康』(NHK総合)第21回「長篠を救え!」。奥三河の長篠城は武田軍に包囲され落城寸前。城主・奥平信昌(白洲迅)は鳥居強右衛門(岡崎体育)を岡崎へ送り出し、徳川に援軍を求める。強右衛門の手紙を受け取った家康(松本潤)が織田に援護を求めると、信長(岡田准一)は2万を超える軍勢を率いて岡崎へやってくるのだが……。
家康と信長のやりとりは回をおうごとに緊張感が増している。反対勢力を力でねじ伏せ、天下統一に近づいていく信長から見れば、家康などいつまで経っても「白兎」なのだが、酒席の場で信長と向かい合う家康には、対等に立ち向かわんとする気概が感じられた。
月代姿の信長が家康を前に進んで膝をつき、詫びを入れた時点で不穏な空気は漂っていた。だが、酒席の場ではそれ以上にひりつくような緊張感が伝わってくる。信長は秀吉(ムロツヨシ)に清州以来の盟約を終わらせると告げさせた。それを聞いて戸惑う家康の顔を、信長はじっと見つめながら口に酒を運ぶ。その眼は家康の困惑を、そして家康がどう出るのかを楽しんでいるように映る。徳川勢に対して、秀吉が声色だけは明朗快活に「信長の臣下になれ」と伝えている最中、信長はただ1人余裕のある佇まいで酒をたしなんでいた。家康をはじめ、瀬名(有村架純)や信康(細田佳央太)、亀姫(當真あみ)、家臣らが緊張で息が詰まるような佇まいをしている中、たった1人悠然とした態度を示す信長は周囲を圧倒している。誰もが退く“圧”をまとうと「いっそのこと……今、ここで、俺の首を狙ってみてはどうか」と家康の家臣たちを焚きつける。信長は家康をも煽り立てた。
「どうする? 家康」
対する家康の反応は、幾度となく「どうする?」な局面に追い込まれてきた家康だからこそ、これまでとは異なるものだった。家康は厳しい顔つきを崩さぬまま「今まで……織田が徳川に何をしてくれたんじゃ」と思いの丈を口にすると、臆することなく信長に近づいていく。
「わしは桶狭間以来、この手で我が国を守ってきたんじゃ! 多くの犠牲を払って!」
家康を演じている松本のこの台詞の力強い言い回しには、夏目広次(甲本雅裕)や本多忠真(波岡一喜)など、多くの家臣たちの死があって家康の今があることが感じられた。家康は彼らの死を無駄にしまいと涙を流しながら、そして戦なき世を願いながら、戦いに挑み続けている。信長の傍若無人ともいえる立ち居振る舞いに怒りをあらわにし「何故、今更お前の家臣にならねばならんのか!」と、信長から目を逸らすことなく伝えた。
家康と信長が真っ向から睨み合う場面は静寂で描かれ、2人の間の凄まじい緊張感がひしひしと伝わってきた。