『鬼滅の刃』時透無一郎の変化が涙を誘う 河西健吾の巧みな演じ分けが光った回想パート
無一郎の意識が戻ると、鬼は無一郎に殺されかけていた。突然2人を襲い兄を死に追いやった残虐な鬼だが、無一郎はその鬼を凌駕する強さを持っていた。この場面が、後に有一郎が言う「自分ではない誰かのために無限の力を出せる」無一郎の人間性を象徴している。自分ではなく、兄の有一郎を守るために力を出したのだ。
無一郎が兄を守ったのと同様、有一郎も彼なりの愛情で弟を守り続けてきた。それは、鬼の襲撃を受けて意識が朦朧とする中で、自分ではなく「弟だけは助けてください」と祈っていた様子からわかる。すれ違ってばかりの2人だったが、それぞれ自分にないものを補い合っていた兄弟だったのだろう。鬼に襲われ血に染まった部屋で弟の無事を祈り続ける兄と、その兄を看取る弟の様子に胸を打たれた。
有一郎は無念にも命を落としてしまうが、有一郎の想いや言葉は無一郎の糧となり、無一郎をさらに強くさせる。第8話では、炭治郎と同じく顔に痣が発現すると「霞の呼吸 肆ノ型 移流斬り」や「霞の呼吸 伍ノ型 霞雲の海」を披露。鉄穴森や小鉄、鋼鐵塚など刀鍛冶を守るために戦う。これまでは玉壺に押され気味だったが、痣が発現すると、機敏に刀を捌き、確実に斬っていく。その威力は玉壺の頸に届くほどの敏速さであった。そして、記憶を取り戻したことで変わったのは力だけではない。性格にも変化が見られた。
「俺のために刀を作ってくれてありがとう鉄穴森さん」と、しっかりと相手の名前を呼びお礼をしていた。刀鍛冶を「武器を作るしか能がない」と表現していた頃とは比べものにならない。家族に愛されていた頃の、人の傷みがわかる無一郎を取り戻したのである。
『刀鍛冶の里編』では、目に光がなく、何を考えているか分からなかった無一郎が、誰かのために戦うようになるまで、精神的に大きく成長した様子を見ることができた。今の無一郎の瞳は、彼の日輪刀と同じ色で綺麗に輝いている。心身ともに成長した無一郎の勇姿を、引き続き見守りたい。
■放送情報
『テレビアニメ「鬼滅の刃」刀鍛冶の里編』
フジテレビ系にて、毎週日曜23:15~23:45放送
出演:花江夏樹、鬼頭明里、河西健吾、花澤香菜、岡本信彦、古川登志夫、鳥海浩輔
主題歌:MAN WITH A MISSION×milet「絆ノ奇跡」
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
製作:アニプレックス、集英社、ufotable