『らんまん』神木隆之介が巧みに表現する真っ直ぐすぎる恋心 山谷花純の丁寧な芝居も光る

『らんまん』万太郎の真っ直ぐすぎる恋心

 第9週のタイトルになっている「ヒルムシロ」は、ゆうが名主の息子に「鳥を見に行こう」と誘った思い出の沼に浮かんでいた水草。水桶のヒルムシロにヤブジラミを乗っけて恋に悩む万太郎に、ゆうは昔の自分を重ね合わせていたのだろう。ここではりん、えい、ゆうがそれぞれの言葉で万太郎を勇気づけていくが、真ん中にいるのはやはりゆうだ。

「誰かを好きになって綺麗なままでいようだなんて、ちゃんちゃらおかしいんだよ。自分の丸ごと全部でその人のこと好きなんだからさ」

 恋心とは理屈では語れぬものだ。ゆうの言う通りに、柱に縛り付けられても心は言うことを聞かない。家に反対されて駆け落ち、というのもこれまでの朝ドラでは描かれてきた。それで言えば、身分の差から恋心を諦めようとしている、または嫉妬心が生まれているという点は万太郎とゆうの共通項だ。水桶のヒルムシロの葉っぱに小石を2つ乗せるゆう。万太郎が葉っぱをズブズブと水に沈めていたのが自身の心境を表していると捉えるならば、小石を乗せても沈まないヒルムシロは「恋は明るうて浮き立つもん」と話していた万太郎のクリアな恋心とも言える。さらにその小石は万太郎とゆう。万太郎と話すことで、ゆうもまた過去の自分を抱きしめながら、一歩前に進むことができたはずだ。どこか影のあったゆうが、晴れ晴れとした表情を浮かべる山谷花純の芝居が印象的だ。

 高藤を相手に勝利宣言をした万太郎が向かう先は、白梅堂。しかし、寿恵子は舞踏練習会のため不在で、母のまつ(牧瀬里穂)と菓子職人の文太(池内万作)が万太郎を出迎える。万太郎が寿恵子に伝えたかったのは、しばらく白梅堂には来ないということ。白梅堂の菓子も、寿恵子のことも、「好き」はより一層強くなっていくばかりだが、だからこそ自分が一人前の植物学者になってから寿恵子を迎えにきたい。植物の標本作りと検定、植物学雑誌の創刊の先に、寿恵子に見合う自分がいるのだと、万太郎は白梅堂を笑顔で飛び出し、全力で走っていく。

 路地を抜けた先には、神田の大畑印刷所。雑誌を刷るため、石板印刷を学ぶ必要が万太郎にはあった。筋肉隆々の男たちに、やかんの水をラッパ飲みする店主の大畑義平(奥田瑛二)。暑苦しい! 渋い!

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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