演技、音楽、脚本全てが説得力抜群の映画『怪物』 あなたの中にも“怪物”は潜んでいる?
もう1つは校長先生と湊が音楽室で話すシーンだ。詳しくは書かないが、物語の中心の事件が1つの結末に進んでいる頃、2人が楽器を拭きながら事件について話し、幸せとは何かを語る。ここでも校長を演じる田中の存在感が際立っている。どこかで聞いたことのあるような言葉なのだが心に響く言葉だった。印象的だったシーンを2つ挙げたが、書いてみると、どうやら私は田中裕子の演技にかなりくらってしまっているらしい。
坂本龍一さんの音楽の使われ方も印象的だ。物語の転換点に坂本さんの音楽が印象的に流れるので、どこか坂本さんの音楽が流れると少し頭を整理するタイミングなのではないかと私は考えていた。
最後に、余談にはなるが、筆者は坂元裕二脚本の『カルテット』(TBS系)で短い間だが制作部でスタッフをしていたことがある。第2話の軽井沢でのコンビニの定員役は私だ(笑)。そんな私が6年後に坂元裕二脚本の『怪物』の感想を書いているとは、何か感慨深い思いがある。
間違いなく今年を代表する映画の1つである今作を是非劇場で観てほしい。観ている125分間、あなたも自分の中の怪物を探す旅を体験しているのかもしれない。そして明日も生きていこうと思える作品である。
■公開情報
『怪物』
全国公開中
監督・編集:是枝裕和
脚本:坂元裕二
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子
企画・プロデュース:川村元気、山田兼司
音楽:坂本龍一
製作:東宝、ギャガ、フジテレビジョン、AOI Pro.、分福
配給:東宝、ギャガ
©2023「怪物」製作委員会
公式サイト:gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
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