今年の秋はよしながふみ祭り! 『大奥』『きのう何食べた?』続編を同時に楽しめる喜び

『大奥』『何食べ』今秋はよしながふみ祭り!

 一方、同じくよしながふみ原作のドラマ『大奥』(NHK総合)season2も10月クールに放送される。同作は若い男子にのみに感染し、感染すれば数日で死に至る奇病「赤面疱瘡」の蔓延で男女の立場が逆転した江戸パラレルワールドを描くSF超大作だ。

 単行本にすれば全19巻、江戸幕府3代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還にいたるまで200年以上の歴史をすべて映像化するにあたり、脚本に選任されたのは森下佳子。『JIN-仁-』(TBS系)や『義母と娘のブルース』(TBS系)など、原作ものを手がけたら彼女の右に出る者はいないと言われる森下に放送前から寄せられた期待は、1月クールに放送されたseason1の時点でも十分に回収されたと言っても過言ではない。原作で描かれるすべてのエピソードを時間内に収めるのは難しくとも、大事なシーンを抽出し、そこにオリジナルの台詞と展開を挟み込むことで、ジェンダーや疫病、権力などの重厚なテーマを現代に当てはめても効力を持つ形で確立させた森下の手腕に誰もが唸らざるを得なかった。

『大奥』現代に繋がる課題を示したシーズン1最終回 冨永愛の力強い一言が希望を残す

死の間際、遠き後世の姿を夢に見る八代将軍吉宗(冨永愛)。渋谷のスクランブル交差点を歩く一人の女性が後ろを振り返る。それは自分と瓜…

 また主役から脇役に至るまで、「この人にしかなし得なかった」と思わせる名演で人々の心を震わせた俳優陣にも言及しないわけにはいかない。時代劇初出演ながら、season1の主人公ポジションを担った冨永愛の圧倒的カリスマ性とそれでも人を寄せ付ける親しみを兼ね備えた8代将軍・吉宗、斉藤由貴が正気の沙汰とは思えぬ行動の裏に矜持を忍ばせた春日局、仲里依紗の誰もが恋に落ちるような美貌から苦しみが溢れ出る5代将軍・綱吉など、枚挙にいとまがないほどにどの人物もまだ心に残っている。

 season2は、吉宗たちが総力を挙げた赤面疱瘡の特効薬づくりを引き継いだ者たちによる「医療編」からスタートし、10代将軍・家治の時代に老中となる田沼意次を松下奈緒、オランダ人と日本人の間に生まれた蘭学者の青沼を村雨辰剛、新進気鋭の本草学者・平賀源内を鈴木杏、青沼や平賀源内とともに赤面疱瘡撲滅に挑む黒木を玉置玲央、伊兵衛を岡本圭人、吉宗の孫で次期将軍の座を狙う松平定信を安達祐実が演じる。またもや実力派キャストが集められた続編に期待しかない。

 観る人の目がどうしても厳しくなってしまう実写化作品の中でも近年稀に見る成功例と言える『きのう何食べた?』と『大奥』。今秋来たるよしながふみ祭りに備え、読めばさらにドラマが面白くなる原作の方もチェックしておきたい。

■放送情報
ドラマ24『きのう何食べた? season2』
テレビ東京ほかにて、2023年10月クール放送 毎週金曜深24:12~放送
出演:西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、田中美佐子、田山涼成、梶芽衣子
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、松本佳奈、平田大輔
音楽:福島節、澤田かおり
チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京)
プロデューサー:阿部真士(テレビ東京)、佐藤敦、瀬戸麻理子
企画監修:神田祐介
制作:テレビ東京、avex pictures
制作協力:オフィス・シロウズ
製作著作:「きのう何食べた? season2」製作委員会
©︎「きのう何食べた? season2」製作委員会 ©︎よしながふみ/講談社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta2/
公式Twitter:@tx_nanitabe

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