『だが、情熱はある』富田望生がハマり役過ぎる しずちゃんをリアルに再現できた理由

『だが、情熱はある』富田望生がハマり役

 オードリーの若林正恭と南海キャンディーズの山里亮太の人生をドラマ化した日本テレビ系日曜ドラマ『だが、情熱はある』で、しずちゃん役を好演している富田望生。King & Princeの髙橋海人が若林を、SixTONESの森本慎太郎が山里になりきった演技が大きな話題を呼んでいる今作だが、2人に負けずと劣らない富田のそっくりな演技に、しずちゃん自身も「自分こなんやったなと」と賛辞を贈っている。そこで、バイプレイヤーとして確かな存在感のある俳優・富田望生の魅力について触れてみたい。

 現在の若手俳優の中で名バイプレイヤーとして大活躍をしている富田望生。彼女の魅力は、一見キャラクターが先行する存在と見せかけ、それを凌駕する圧倒的な演技力があること。そのため、脇役でありながらしっかりとキャラが立ち、視聴者の心に何かを残していく。その主人公や視聴者との絶妙な距離感が実に巧い役者だ。

 デビュー作となる映画『ソロモンの偽証』(2015年)では、これまでエキストラのみの経験だった当時15歳の富田がワークショップ形式のオーディションを勝ち抜き、監督の指示で役に近づけるために2カ月で15キロまで増量して撮影に挑んだというエピソードが有名な浅井松子役を演じた。いじめられっ子で容姿に恵まれないという設定で、健気で純真な姿勢だったり、罪の意識と唯一の親友を裏切れない苦しい葛藤の涙など、心が削られるような熱演をデビュー作から見せている。

 以降、そのビジュアルを生かし、映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(2017年)や、映画『あさひなぐ』(2017年)、ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(2019年/日本テレビ系)など、学園ものや個性的なメンバーが集まる作品には欠かせない“ぽっちゃり枠”要員として知名度を上げていく。こうした枠は陽気でムードメーカー的なポジションなのが定番で、富田が演じる役柄も、『3年A組』での教室でモクモクと弁当を食べる柔道部員の怪力女子ぶりや、『チア☆ダン』でのぽっちゃり体系でキレキレのダンスを見せるなど、ビジュアルの期待に応える演技を見せつつ、単にコミカルなキャラに留めない。こうした人特有のコンプレックスからくる弱気な部分、周りの輝きに負けないよう一生懸命に虚勢を張っている姿、恋に一途な乙女だったり、本気で友達思いのイケメンな部分など、見た目と内面のギャップを見せるのもキャラの醍醐味だと思うが、富田はそれぞれの人物の内面を垣間見せる演技が実にスマートで、「こういう人いるよね」と思わせる人物を違和感なく演じる。

『3年A組』放送から3年 永野芽郁、富田望生、望月歩らが迎えた学生役からの“脱皮期間”

とんでもない才能がうごめき、ひしめき合い、さらなる開花の時を待ち望んでいた、そんな教室がある。3年前に放送された『3年A組 ―今…

 そして2018年に出演した『宇宙を駆けるよだか』(Netflix)での、自殺するほど容姿にコンプレックスのある卑屈な子が、クラスのマドンナと入れ替わる役を演じ、容姿は同じなのに内面が違うことで、美醜の感じ方が視聴者も曖昧になってくる。そうした究極の内面の演技を見せている。

 どうして作品ごとに役に寄り添った演技ができるのか。その理由について、2021年12月16日放送の『めざまし8』(フジテレビ系)の「古市憲寿のエンタメ社会学」に出演した際に、「役作りにおいて『どうしてこういう役名になったんだろう』とその由来を調べ、親がどんな気持ちで育てたのかということにまで考える」という趣旨の発言をしていた。役に全力で向き合い、徹底的に役作りに励むからこそ、富田が演じる役は心の本性が垣間見える。また自分だけではなく、しっかりと相手の役者の演技を受け止め反応していくことを心がけているからこそ、友人役として絶妙な距離感が構築できているのだろう。

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