『波よ聞いてくれ』平野綾のまどかはベストキャスティング ラジオの主役は誰なのか

『波よ聞いてくれ』平野綾はベストな配役

 ラジオの主役はパーソナリティーか、それともリスナーか。『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)第3話では、正反対なようで実は……なミナレ(小芝風花)とまどか(平野綾)のバトルが勃発した。

 酔っ払って部屋を間違えるわ、生ものを床下収納に放置して腐らせるわ、挙げ句に下の階の住人を殺人犯と勘違いして警察沙汰を起こすわで、とうとうアパートを追い出されたミナレ。本作は、そんなヒロインにあるまじき破天荒キャラの彼女に遜色ないほど、ひと癖もふた癖もある人物で周りが固められているのが面白い。

 特に円山ラジオ局(MRS)の面々。ど素人をいきなりパーソナリティに抜擢し、冠番組を持たせるなんて良い意味でトチ狂っている麻藤(北村一輝)はもちろん、その暴挙についていけているスタッフたちも一見普通なのに底が知れない。そんな彼らの内情が少しずつ明らかになってきた。

 行き場のないミナレを自分の家に快く招き入れるのは、アシスタントディレクターの瑞穂(菜乃華)だ。何事にもひたむきでミナレよりよほどヒロイン感があるけれど、彼女こそ最も意外性のあるキャラクターと言ってもいいかもしれない。ちょっと行き過ぎるほど几帳面で、何より官能小説を読んでいる。

 というのも、放送作家・久連木(小市慢太郎)の本業が官能小説家で、瑞穂はふた回り以上も年上の彼に限りなく恋愛感情に近い憧れを抱いているのだ。十分興味深い人生を送っているのに本人はつまらないと感じている。そんな瑞穂の前に彗星の如く現れたミナレは我が道をゆくトリックスター。あっという間に常識を覆し、瑞穂の心を攫っていった。

 だけど一方で、そういうミナレの“主役感”に辟易としているのがまどか(平野綾)。看板パーソナリティーである自分よりも麻藤が肩入れしている新人とあっては、彼女がミナレを目の敵にするのは当然だろう。それに輪をかけて気に入らないのが、ミナレがやっている番組の内容だ。元彼への未練を断ち切る架空実況だったり、迷惑をかけた住人への公開謝罪だったり、前代未聞な企画の中心にいるのはいつもミナレ。弁が立つ彼女の有無を言わせぬノリと勢いがあってこそ成立する番組となっている。それは、ラジオはあくまでもリスナーが主役とするまどかのポリシーに反するものだった。

 そのため、まどかはわざわざミナレを呼び出して説教を垂れる。彼女がそこで見せるのはいつもの毅然とした態度からは想像もつかないやさぐれた姿。カップ酒を煽り、ラップバトルのごとく言葉の切れ味が鋭いミナレに負けじとディスり合ったかと思えば、酔っ払ってその辺に寝転んだり、銅像をミナレだと思って話しかけたりする。

 この一連のやりとりで、意外性のある平野綾のキャスティングに合点がいった。声優である平野の耳心地のいい声とすべらかな台本読みがラジオパーソナリティー役に活かせるのはもちろん、こうして主演の小芝と互角にやり合えるのは近年舞台を中心に俳優としての経験を積む彼女だからこそ。ビジュアルありきで配役を決めないところにこのドラマの良さがある。

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