映画『名探偵コナン』とヴィン・ディーゼル映画に共通点? ハリウッド級アクションを堪能
また、劇場版『名探偵コナン』はヴィン・ディーゼル映画といくつか共通点がある。劇場版『名探偵コナン』のアクションといえば、ターボエンジン付きスケートボードで縦横無尽に駆け回るスリリングなチェイスシーン(これが本当にワクワクする)だが、『トリプルX:再起動』(2017年)ではヴィン・ディーゼルがスケボーで縦横無尽に駆け回る姿を見せる。他にもキック力増強シューズとサッカーボールを使った決戦兵器じみた破壊とアクションがあるが、これまた『トリプルX:再起動』でネイマール(本人)が巧みな足さばきでペーパーナプキン・ホルダーを蹴り飛ばし強盗を撃退するシーンがある(そもそも『トリプルX』シリーズはXスポーツを題材にしたスパイ映画であり、『名探偵コナン』のアクションはかなりXスポーツ的である)。また、ヴィン・ディーゼルの代表作『ワイルド・スピード』シリーズにはボンネット理論がある。つまり、「どんな高所から落下しても、ボンネットに着地すれば大丈夫」というもの。奇しくも『黒鉄の魚影』ではボンネット理論が遺憾なく発揮されているシーンがある。
これをして「劇場版『名探偵コナン』=ヴィン・ディーゼル映画」といったインターネットじみた提言をするつもりはない。だが少なくともリアリティラインはヴィン・ディーゼル主演のアクション映画に近く、即ち派手さに関してはハリウッド映画に負けずとも劣らない……なんなら時に凌駕していることもある(流石のネイマールも蹴りでリニアカーの前頭部を吹っ飛ばしたりしないので)。
アニメーション映画とはいえ邦画でこれほどの規模のアクションをやっている作品はないし、アニメーションだろうと実写だろうとCGだろうとアクションに貴賤はないので劇場版『名探偵コナン』を観ればハリウッド規模の(公共物を軽視した)アクション邦画が劇場で拝めるということだ。
そしてこれは劇場版『名探偵コナン』独自の要素なのだが、アクションシーンにも「見た目は子供、頭脳は大人」が効いてくる。江戸川コナンは肉体的には子供なので単純な暴力に向かい合うには実のところあまりにもか弱い存在。それでも頭脳は高校生探偵なので不屈の精神力で犯罪や暴力に立ち向かう。実際小さな身体で黒の組織に立ち向かう姿は泣けてくるし、やっぱり江戸川コナンは滅茶苦茶カッコいいヒーローなのだと改めて思った。
『名探偵コナン 黒鉄の魚影』では殺人ミステリと黒の組織関連のスパイスリラーとラブストーリーを同時にやりつつ、それでいて劇場版『名探偵コナン』のお約束(阿笠博士のクイズや壮大な爆発)もこなし、人気キャラクターたちの活躍もバランスよく配置する……。また、ゲストキャラクターの物語も魅力的。アクションも超すごい。いくらなんでも特盛すぎる要素が渾然一体となって「劇場版『名探偵コナン』」という一つのジャンルを作り出している。困ったことに劇場版『名探偵コナン』というジャンルを楽しめるのは劇場版『名探偵コナン』しかないが、なんと劇場版『名探偵コナン』は毎年公開(コロナの影響によって延期した2020年を除く)してくれるらしい。「なにそれ! 凄すぎる」。こんな最高のシリーズを愚かしくも今までちゃんと追ってこなかったことを後悔してもしきれないが、今はこれから劇場版『名探偵コナン』を追えることの喜びが勝る。もしまだ劇場版『名探偵コナン』をちゃんと観たことのない人がいたら、筆者と同じ後悔と喜びを味わってほしいのでぜひ劇場で『名探偵コナン 黒鉄の魚影』を。
■公開情報
『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』
全国東宝系にて公開中
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:立川譲
脚本:櫻井武晴
音楽:菅野祐悟
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、林原めぐみ、沢村一樹ほか
製作:小学館、読売テレビ、日本テレビ、ShoPro、東宝、トムス・エンタテインメント
配給:東宝
©︎2023 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:https://www.conan-movie.jp