『ペンディングトレイン』山田裕貴と赤楚衛二の見事な対比 乗客たちの個性も顕著に
人々の体力はじわじわと消耗し、理性は壊れはじめる。それでもなお、人は人を信じることができるのだろうか。『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系、以下『ペンディングトレイン』)の第2話では極限状態の中での“信頼”について描かれた。30年後の未来へと飛ばされてしまった直哉(山田裕貴)、優斗(赤楚衛二)、紗枝(上白石萌歌)らは、水も食料もない土地で何とか生き延びようともがく。張り詰めた空気が続く中、一同はなんとか希望を見出そうとしていた。
水のペットボトルを積んだカートは、何者かに盗まれていた。水がなければ人は3日しか生きられないという状況の中、乗客たちは徐々に心の余裕を無くしていく。そんな中、直哉、優斗たちは、どこかに水がないかと森を探索することに。途中で見事水源を見つけるも、それは切り立った崖の上だった。その後、ペットボトルを盗んでいた田中弥一(杉本哲太)から無事に水を取り返すことはできたものの、優斗は自ら崖にのぼり、皆のために更なる水を確保しようとする。そこで優斗が崖の上から見たのは遥か遠く、海の中にぼんやりとたたずむ富士山だった。改めて助けもない、水も食料も電源もない未来に来てしまったのだと乗客は悟る。その後も車内ではいさかいが絶えなかった。そんな中で各々は、離れ離れになった家族や友人を思い描きながら希望を残そうとするのであった。
消防士として働いていた知見と体力から、率先して乗客を守ろうとする優斗。赤楚はそんな優斗を演じるために、プロテインや筋トレをかかさず、日焼けサロンにも通い“たくましさ”に磨きをかけたようだ。第2話では優斗が険しい崖を登るシーンもあり、赤楚の役作りの成果が見える。このクライミングは赤楚が実際に登っていることを宮﨑プロデューサーが明かしており、身体を張って撮影に挑んでいることがわかる。気力、体力共に削がれる状況を生き抜く優斗を演じるにあたり、役を演じる赤楚自身も身を削って挑んでいると思うと一つひとつのシーンに重みが増してくる。
加えて印象的なのは、直哉と優斗の描かれ方の対比だろう。視聴者は回想シーンや、一人きりでいる直哉の姿を見ることができるため、徐々にどんな人物であるのかはわかってきている。しかし優斗や紗枝の目から見た直哉は、まだまだ謎が多いだろう。特に人を信じることで生きようとする優斗と、疑うことで生きようとする直哉には、考え方の違いが顕著に現れる。だが、どちらの言葉にも一理あり、視聴者の感情は対極にある2人の間を行き来することになるだろう。
生存から2日以上が経ち、人々の個性は今まで以上に顕著になってきた。そこには人間関係も生まれ始めている。「乗り合わせた乗客」という集団でとらえられていた人々には、一人ひとりに“想い”があり、“主張”があることがわかってくる。信頼をキーワードに描かれた第2話では、お互いが適切な距離感で接せるように車内清掃を決行した様子も印象的だった。こうして生きやすい環境がうまれ、整備され、いつかは「暮らし」が生まれるのだろうか。トラブルや問題解決を繰り返しながら、徐々に変化していく様子は、組織作りと通ずるものもある。彼らがこれからどう組織化し、どんな関係を作っていくのかにも注目していきたい。
■放送情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、池田優斗、金澤美穂、宮崎秋人、村田秀亮(とろサーモン)、志田彩良、白石隼也、大西礼芳、坪倉由幸(我が家)、山口紗弥加、前田公輝、濱津隆之、杉本哲太、松雪泰子
脚本:金子ありさ
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
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