『ハリー・ポッター』ドラマ版は原作ファンも納得の内容に? 破格の予算規模のシリーズへ
キャスト一新! 原作に忠実なシリーズに
ドラマシリーズは原作に忠実な内容となり、1シーズンにつき原作1冊分のストーリーになるという。この発表に歓喜しているのは原作ファンだ。映画では削られてしまったセリフや名シーン、各キャラクターの掘り下げも映像化されるとの期待から、すでに心待ちにしている声も多い。一方で、HBOおよびMaxのCEOであるケイシー・ブロイスは、このシリーズが「10年つづく」ともしている。原作は7巻までなので、“1シーズンにつき原作1冊分”であれば3シーズン分足りないように思うが、少なくとも同じ“魔法ワールド”の作品である『ファンタスティック・ビースト』(以下、『ファンタビ』)シリーズについては、今回のドラマシリーズでは描かれないと明言されている。このあたりはどういうことなのかまだ不明なので、さらなる情報解禁を待ちたい。
また、気になるキャストについては、全てのキャラクターを新たなキャストが演じることが発表された。子役に新たなキャストが必要なのは当然だが、そのほかのキャストも総入れ替えとなる。テレビシリーズのキャスティングで注目したいのは、映画化の際に原作者のローリングが指定した「キャストは全員イギリス人でなければならない」という条件が今回も適用されるのか、また各キャラクターの設定に変更があるかどうかだ。
『ハリー・ポッター』はイギリスが舞台なのだから、イギリス人をキャスティングするのは当然とも思える。ローリングは本作にも製作総指揮として参加するが、キャスティングについてどこまで権限があるかは不明だ。また、続編舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』では、映画では白人のエマ・ワトソンが演じたハーマイオニー役を、アフリカ系のノーマ・ドゥメズウェニが務めたことで、一部から人種差別的で不当な批判があった。ローリングはこのキャスティングには非常に前向きで、「(ハーマイオニーが)白い肌だと明記したことはない」と語るなど、ドゥメズウェニを擁護していた。そういった経緯から、映画版から人種が変更になるキャラクターも、もしかしたらいるかもしれない。
J・K・ローリングが携わることに疑問の声も
一方で気がかりなのは、原作者であるJ・K・ローリングの評判の悪さだ。前述のとおり、彼女は今回のドラマシリーズに製作総指揮として参加する。このことについて、難色を示す向きもある。というのも、2020年頃からローリングはトランスフォビア的な発言を繰り返し、批判されているからだ。彼女の差別的な発言の数々には、『ハリー・ポッター』および『ファンタビ』シリーズに出演する俳優たちも眉をひそめている。ブロイスはこのことについて、ローリングの発言はネット上のもので非常に微妙で複雑なものとし、「私たちが足を踏み入れるようなものではありません」とコメント。なんとも及び腰な姿勢だが、ローリングが自身の著作に関わるフランチャイズのクリエイティブ面でのコントロールを握っている限りは、彼女を参加させないことは難しい。ブロイスは「『ハリー・ポッター』の物語は、非常にポジティブで愛と自己受容について描かれています。それが私たちにとって優先事項であり、スクリーンに映すべきものです」とのべ、「彼女(ローリング)の意見はドラマに役立つでしょう」としている。
小説を原作とする映像作品として、ドラマシリーズが優れているところは、映画に比べて長い時間をかけてストーリーを語ることができるため、原作の小さなエピソードまで拾いやすいところだ。『ハリー・ポッター』シリーズは映画版も大成功を収めたが、原作から大幅にカットされたシーンやキャラクターも多く、残念に感じたファンも少なくなかった。そのため今回のドラマシリーズで、お気に入りのエピソードやキャラクターが深堀りされることを楽しみにしているファンは多い。映画版しか知らなかった視聴者にも、新たな発見と楽しみを提供してくれるだろう。
参考
・https://deadline.com/2023/04/harry-potter-tv-series-max-release-date-cast-1235323284/
・https://variety.com/2023/tv/news/harry-potter-tv-series-hbo-max-1235578295/