『search/#サーチ2』は前作からどう進化した? サスペンス部分に宿る恐ろしい独自性

『search/#サーチ2』を前作と比較

 とはいえ本作の中身は、ただ推理ゲームを面白がれるというだけにはとどまっていない。この母と娘の関係が明らかになっていく過程で、アメリカはもとより、日本でもいまとくに問題になっている、ある社会問題が描かれるのだ。そのとき、本作がどのような姿勢で撮られている作品で、何と戦っているのかが明らかになる。これもまた、一種のミステリーだといえよう。

 同時に、本作では新たにティーンエイジャーを主人公に設定し、その母親の知られざる過去を探っていくことで、主人公ジューンがグレイスを捜索する過程が、一人の若い女性が自分自身を理解していくという物語としても機能することになる。前作は、娘を助けたい一心で精神的に追いつめられていく、ジョン・チョーの鬼気迫る演技がストーリーに推進力を与えていたが、本作では打って変わって、“自分探し”の要素が与えられているのである。

 また、さまざまな人種が登場するというのも、シリーズを通しての特徴だ。前作の主人公を演じていたのが韓国系のジョン・チョーだったように、とくにアジア系の俳優が、本作で何人も出演していることは、日本を含めたアジア圏の観客にとっても意義深いものがある。こういう試みによって、以前よりもアメリカ映画は日本の観客に近しいものとなってきている。

 だが、何といってもこのシリーズの大きな魅力は、PCなどの画面や、見覚えのあるアプリなどが次々に登場し、ある意味でそれが物語の鍵を握った人物であるかのように、展開を進めていく役割を担っているというユニークな構造にあるといっていいだろう。そこでは、それほど有名ではないサービスも登場し、前作では、筆者もユーザーであったウェブログサービス「Tumblr」も現れ、個人的に興奮させられてしまった。

 これがエンターテインメントになり得るようになったというのは、テクノロジーの進歩や多様なサービスの拡充、インターフェイスの充実、そしてデジタルデバイスの変容と普及という、現実の社会的な変化にこそあるだろう。シリーズの製作者というよりも、われわれと電子機器とのかかわりの変遷こそが、このサスペンスを成立させ、娯楽映画として耐え得るビジュアルを担保することになったのである。このシリーズの最大の手柄とは、そこに目をつけたことにこそあるのではないか。

 とはいえ、この試みを長編映画で最初におこなった前作に比べ、本作のインパクトが小さくなっているのは否めない。前述したように、ジョン・チョーの演技に代表される熱気やドライブ感が弱まってしまっているのも確かだろう。それには、子どもが親を心配するよりも、親が子どもを心配する気持ちの方が、一般的に共感を呼びやすいという部分も影響しているように感じられる。

 しかし、本作ならではの画期的な部分もある。PCなどの画面を使用者が神であるかのように、自由にコントロールできる味方として描かれていた前作とは異なり、その安全すら脅かされるというサスペンスが用意されている部分にこそ、本作の恐ろしい独自性が存在するのである。これがいったいどういう意味なのかは、本編を観ることで確認してほしいが、まさに、自分が見ている世界が一気に裏返ってしまうような視覚的衝撃は、本作で最も興奮できる瞬間だったのではないだろうか。

■公開情報
『search/#サーチ2』
全国公開中
監督・脚本:ウィル・メリック&ニック・ジョンソン
原案:セヴ・オハニアン&アニーシュ・チャガンティ
製作:ナタリー・カサビアン、セヴ・オハニアン、アニーシュ・チャガンティ
出演:ストーム・リード、ニア・ロング、ヨアキム・デ・アルメイダ、ケン・レオン、ダニエル・ヘニー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
原題:Missing
公式サイト:https://www.nazoshisya.jp/search2/
公式Twitter:https://twitter.com/SearchMovieJP

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