阿佐ヶ谷姉妹、錦鯉、クロちゃん、若林&山里 芸人の自伝描くドラマ・映画、なぜ増えた?

芸人の自伝描くドラマ・映画、なぜ増えた?

 King & Princeの髙橋海人とSixTONESの森本慎太郎が主演を務める日本テレビ系日曜ドラマ『だが、情熱はある』が4月9日にスタートする。本作は、2人で漫才ユニット「たりないふたり」としても活動した、オードリー・若林正恭と南海キャンディーズ・山里亮太の半生をドラマ化したもの。若林役を髙橋、山里役を森本が演じ、屈折した青春時代を送った2人が誰もが知る人気お笑い芸人になるまでの道のりを体現する“サクセスストーリー”だ。

 一方、Paraviでは先月から安田大サーカス・クロちゃんの人生をドラマ化した『クロちゃんずラブ~やっぱり、愛だしん~』が独占配信中。クロちゃんこと、黒川明人役を演じる野村周平の振り切りすぎた演技が話題となっている。

Paraviオリジナル 人生ドラマ劇場『クロちゃんずラブ~やっぱり、愛だしん~』©Paravi

 こちらはサクセスストーリーというよりも、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)内の企画「モンスターズラブ」で10年ぶりに彼女をゲットしたことでも話題になったクロちゃんの恋愛遍歴を中心に描いたものではあるが、どちらも本人や周囲の人々への取材を基に、芸人の知られざる過去を映像化するという点では同じだ。

 また、昨年は漫才日本一決定戦の『M-1グランプリ2021』(テレビ朝日系)で史上最年長王座となった錦鯉の長谷川雅紀と渡辺隆の半生が『泳げ!ニシキゴイ』というタイトルで全44話の大作ドラマとなって、朝の情報番組『ZIP!』(日本テレビ系)で放送されたり、阿佐ヶ谷姉妹の渡辺江里子と木村美穂が一つ屋根の下で暮らしていた日々が綴られたエッセイ『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(幻冬舎)もNHKでドラマ化。2021年にはビートたけしの自叙伝『浅草キッド』(太田出版)が劇団ひとりの手で再度映像化された。

 著名人の人生を描いた伝記・自伝ものは数多くあれど、なぜ今芸人なのか。

お笑い界における“氷河期”と“ブーム”

 その背景には、2018年頃から続く“お笑いブーム”がある。2000年代のお笑いブームはそれを牽引した『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)や『あらびき団』(TBS系)、『エンタの神様』(日本テレビ系)などのネタ見せ番組、当時勢いに乗っていた人気芸人たちによる『ピカルの定理』(フジテレビ系)や『ピラメキーノ』(テレビ東京系)などのバラエティ番組が終了するとともに終焉を迎えた(ちなみにこの時期には、麒麟の田村裕による自叙伝『ホームレス中学生』が映画・ドラマ化されている)。

 以降、お笑い界は氷河期とも言える約10年間の不遇の時代に突入。その長く張っていた氷が溶ける一つのきっかけとなったのが、『M-1グランプリ2018』における霜降り明星の優勝だ。そして、平成生まれコンビとしては初のM-1王者となった彼らが同世代の芸人たちを“第7世代”と括ったことで、ぺこぱ、EXIT、ゆりやんレトリィバァ、四千頭身、ミキといった若い才能に注目が集まるようになる。彼らの活躍が、世間に芸人一代記が受け入れられる土台を作ったといってもいいだろう。

 また、2018年から『M-1グランプリ』の関連番組として『M-1グランプリ アナザーストーリー』が制作・放送されるようになった影響も大きい。同作は優勝したコンビを中心に、一夜にして人生が一変するかもしれない熱き戦いに挑む漫才師たちを追ったドキュメンタリー。そこには、重圧に押し潰されそうになりながら出番を待つ姿から、予選を勝ち抜いた時の安堵した表情、相方とのぶつかり合い、そして優勝時の何にも勝る喜びと涙まで、喜怒哀楽のすべてが詰まっていて心を揺さぶられる。同時にそうした感情を舞台では一切見せることなく、ただ全力で目の前の人を笑わせようとする芸人たちへのリスペクトも生まれるのだ。

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