阿佐ヶ谷姉妹、錦鯉、クロちゃん、若林&山里 芸人の自伝描くドラマ・映画、なぜ増えた?

芸人の自伝描くドラマ・映画、なぜ増えた?

 特に錦鯉の長谷川が電話で母親に優勝を報告し、2人が長い下積み時代に思いを馳せるシーンは視聴者の涙を誘った。その反響もあって、錦鯉の一代記が制作されたのだろう。『泳げ!ニシキゴイ』は錦鯉の2人だけではなく、家族や他の芸人仲間など、彼らを形づくった人々にも焦点を当てた人情物語であった。もちろん、笑いどころも沢山ある。この作品で改めて実感したのが、芸人の持っているエピソードの濃さだ。好奇心旺盛だった子どもの頃の渡辺が瞬間接着剤で祖父の頭にカブトムシを貼り付けたり、下積み時代にお金がなく風呂なしアパートに住んでいた長谷川がカップ焼きそばの湯切り部分をシャワー代わりにしていたりと、面白すぎてフィクションかと思うようなエピソードだらけ。芸人の人生は必要以上に脚色しなくとも、そのままで笑いあり感動ありのドラマになる可能性を秘めている。

錦鯉が教えてくれた“ライフ・イズ・ビューティフル!” 愛に満ちた『泳げ!ニシキゴイ』

2021年、M-1グランプリ最終決戦での錦鯉のネタ。「街中に逃げた猿を捕まえたい」と言い出し暴走する長谷川雅紀を渡辺隆が取り押さ…

  オードリーの若林と南海キャンディーズの山里も10代の頃からお笑い芸人を目指すもなかなか日の目を見ず、負の感情を募らせていった。のちにどちらのコンビも『M-1グランプリ』で準優勝を果たすが、今度は2人とも“じゃない方芸人”として癖と華のある相方の影に埋もれることに。そんな彼らが自分たちの居場所を見つけるまでの物語が、『泳げ!ニシキゴイ』を制作したチームの手でドラマになる。きっとまた感動と笑いを届けてくれることだろう。

次なる映像化は誰の自伝に?

 また、ここ数年は芸人に限らず、俳優・松尾諭の自伝風エッセイをドラマ化した『拾われた男 LOST MAN FOUND』や、タレント・学者として活躍するさかなクンの人生をフィクションを織り交ぜながら描いた映画『さかなのこ』が非常に満足度の高い作品として話題に。また、文筆家・岸田奈美が車いすユーザーの母やダウン症で知的障がいのある弟の日々を綴ったエッセイが『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』として5月よりNHK BSプレミアムほかにて放送されるなど、著名人たちの半生を描く映像作品が増えている。この勢いに乗り、芸人のドラマも引き続き制作されていくのではないか。

仲野太賀×草彅剛による渾身の芝居のラリー 『拾われた男』が刻みつけた一人の男の人生

俳優・松尾諭による「自伝“風”エッセイ」をドラマ化した『拾われた男』(NHK BSプレミアム/ディズニープラス)が先日、最終回を…

 その場合、すでに出版されている芸人たちの自伝がドラマ・映画化される可能性は高い。候補としては、髭男爵としてブレイクした山田ルイが娘の前で普通のお父さんとして振る舞う日々を綴った『パパが貴族』(双葉社)、俳優の伊藤沙莉が妹、蛙亭のイワクラが彼女というオズワルド・伊藤俊介初の著書『一旦書かせて頂きます』(KADOKAWA)、かが屋の加賀翔が父親に振り回された子どもの頃の思い出をもとに書いた小説『おおあんごう』(講談社)、ともにM-1の舞台で披露した破天荒ぶりが話題になったマヂカルラブリー・野田クリスタルの『野田の日記』(ワニブックス)やランジャタイ・国崎和也の『へんなの』(太田出版)などが挙げられる。彼らの“事実は小説よりも奇なり”な人生もぜひ映像で観てみたいものだ。

 

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる