『女神の教室』法律家に必要な資質を説いた柊木 ロースクールの存在意義を示す5人の仲間

ロースクールの存在意義示した『女神の教室』

 前回のエピソードで、実務演習クラスの5人が青南ローを卒業するというストーリー上のひとつの大きな区切りを迎えた『女神の教室〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ系)。3月20日に放送された最終話は、法曹界を目指す彼らにとってはロースクールの卒業がスタートラインではないのだと改めて物語る。言うまでもなくそれは、司法試験に合格すること。同時に“理想と現実のギャップ”という、新しいステップに進むときに必ずといっていいほど直面するテーマを、支え合える仲間たちがいる喜びによって前向きなものへと変化させていく。

 青南ローを卒業して数年後。裁判官として働く照井(南沙良)、目標通り依頼人に寄り添う弁護士になるため働く水沢(前田拳太郎)に、インハウスロイヤーとして働く真中(高橋文哉)、そして司法修習中の天野(河村花)。4人はそれぞれに、ロー時代に思い描いていた理想と現実とのギャップに悩みを抱えていた。一方、まだ司法試験に合格できていない桐矢(前田旺志郎)は、そんな同期たちの様子を見て、全員を馴染みの居酒屋へと呼び寄せる。その頃、文科省の官僚から法科大学院の存在意義を問われた守宮(及川光博)は、柊木(北川景子)に特別委員会への出席を頼むのである。

 これまで柊木が学生たちに教えてきた、“人に寄り添う”ことと“広い視野を持つ”こと。法律家に必要な資質を、会議室の一室で官僚たちに向けて説くクライマックス。交差するようにして、柊木にとって青南ローでの最初の教え子である実務演習クラスの面々がそれを実践していくさまは、まさにこのドラマが提示する“ロースクールの存在意義”に他ならない。もちろんそこに、桐矢が司法試験に合格し、5人で喜び合うという最も望まれた展開が待ち受けるのだから言うことはない。

 法曹に必要な知識と能力を学ぶ場であるロースクールは、必然的に司法試験をパスするためのノウハウを得る場所になりかねない。劇中で安藤(佐藤仁美)が言う「学校って勉強するだけの場所じゃない」の言葉。それはローに限らず、あらゆる“学校”と呼ばれる場所に付随する言葉だ。法律家としてに限らず、人と関わり合うこと以外に人間性を養うのにふさわしい方法はない。ちょうど筆者の母校の建学者である天野貞祐先生の言葉に「大学は学問を通じての人間形成の場である」とある。無論それは、ロースクールでも他のいかなる“学校”でも同じであろう。

 総じてリーガル色よりも学園色の強いドラマになったのは、法律というものへの馴染みやすさの面で奏功したと捉えることができるが、前回までの風見(尾上松也)の一連がストーリーに過剰な起伏を与える以外の効果を生まなかったのは少々惜しく見える。もっともそれらは、ほとんどドラマの題材にもされてこなく、ロースクールがどういうものであるかイメージしづらいことや、専門的な職を見据えた学生を描くという特殊性など、最初のハードルが高かったことが大きいのかもしれない。これがひとつのプロトタイプとなり、現在進行形で減少しつつあるロースクールが、もっと近い存在と認知されることが理想的だ。

■配信情報
『女神の教室~リーガル青春白書~』
TVer、FODにて配信中
出演:北川景子、山田裕貴、南沙良、高橋文哉、前田旺志郎、前田拳太郎、河村花、佐藤仁美、宮野真守、小堺一機、尾上松也、及川光博
脚本:大北はるか、神田優
プロデュース:野田悠介
演出:澤田鎌作、谷村政樹
音楽:武部聡志
主題歌:Vaundy「まぶた」(SDR)
法律監修:水野智幸(法政大学大学院法務研究科)
制作・著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
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