『夕暮れに、手をつなぐ』は広瀬すずと永瀬廉の“すれ違い”の物語 空豆と音は結ばれるのか

『夕暮れに、手をつなぐ』はすれ違いの物語

 『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)は、端的に言ってしまえば空豆(広瀬すず)と音(永瀬廉)のすれ違いの物語だ。「好き」の一言が言えずにゆっくりと遠ざかってしまっている。そのグラデーションのような、美しいすれ違いを全10話で描いているとも言えるのではないだろうか。

 最終回前となる第9話は、そのすれ違いの極地に達している。

「空豆。俺、お前のことが好きだった。今も、これからも好きだと思う」
「音、私は、音が好きだ」

 音が空豆に、空豆が音に送ったLINEは既読がつく前に、メッセージの送信取り消しがされてしまっている。お風呂に入っている間に、レコーディング中に。都合のいい演出と言ってしまえばそれまでかもしれないが、空豆の言う「運命」とも捉えられるだろう。メッセージの送信取り消しは2017年に導入された機能であるが、それをドラマの演出にここまで大胆に取り入れたのは北川悦吏子が初めてであろう。

 2人は思い合っているのに、送信取り消しをしてしまう。それは、空豆は音がセイラ(田辺桃子)と、音は空豆が葉月(黒羽麻璃央)と付き合っていると、それぞれが勘違いをしているからだ。そこには空豆に特別な感情を抱くセイラの嘘と抱擁が作用し合っている。

 それでも互いを好きでいる感情はパンのように膨れ上がっていくばかり。約束の夏の花火にはまだ早い、3月の線香花火を雪平邸の庭で楽しむ空豆と音。空豆は塔子(松雪泰子)の下で葉月とともにフランス・パリに旅立つことが決まっている。一方の音もセイラとのユニット「ビート・パー・ミニット(BPM)」略して「ビーパー」が『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)にも出演。空豆にとっては遠い人に感じてしまっていた。

 だからこそ空豆は音に「手をさぁ、伸ばしたら届く? 音に届くと?」と確認する。ここには「遠くの人を楽しませる人は近くにいる人を悲しませる」という幼い頃、塔子に捨てられたトラウマが強く植えつけられている。それを理解している音は「届くんじゃない? わりと簡単に」と返し、自然と空豆の右手は音の頬へと伸びていく。

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