FACETASM 落合宏理、ファッション界の“レジェンド”アンドレ・レオン・タリーを語る

落合宏理がファッション界のレジェンドを語る

 3月17日からの映画公開に先駆けて、装苑PRESENTS『アンドレ・レオン・タリー 美学の追求者』プレミア試写会が3月13日に東京カルチャーカルチャーで開催された。

 本作は、2022年1月18日に73歳で他界したファッション業界のレジェンド、アンドレ・レオン・タリーの生涯を描いたドキュメンタリー映画。

 プレミア試写会には、人気ブランドFACETASM(ファセッタズム)のデザイナー・落合宏理が登壇し、MCの奥浜レイラと共に映画上映後にトークを行った。

落合宏理

 映画の感想を聞かれた落合は、「(アンドレ・レオン・タリーが映画の中で)“ドラマチック”という言葉をすごい使っていたと思うんですけど、洋服ってそうじゃなきゃいけないし、映画もそうで、人の人生を豊かにするっていうのはすごく重要だと思う。僕はものを作る人間だけど、間に入って表現をしてくれるアンドレがこんなに美しいと、作る側の僕らにも魔法がかかるし、こういう人と出会うと、本当にデザイナーは成長するんだなと。だからすごい羨ましかったです」と、タリーとデザイナーたちの関係性についてコメント。

 映画の中で「ファビュラス」という言葉が印象的だったという落合。「“ファビュラス”って日本だと少し下品に聞こえたりするから解釈はわからないんだけど、彼が言うその言葉にはもうちょっと深い意味があって、その言葉をもらえたら評価につながるということなんだと思うんだけど。彼が言う“ファビュラス”っていう意味をちゃんと知りたいなとこの映画を観て思いました。アンディ・ウォーホルのところにいたから、純度の高い“ファビュラス”を見てたんだろうなと思います」と気になったポイントについても言及。

 若い頃にアンディ・ウォーホルのファクトリーで電話番をしていたという過去を持つタリー。「あ、ここ通ってるんだっていうのはビックリでしたね。それがルーツにがあって、ちゃんとカルチャーをわかっているのはめちゃくちゃすごいことだなと思って。ウォーホルは当時の世界のデザインの中心にいた人だったから、誰よりもカルチャーの真ん中にいたという点で、見る視点がちょっと違いますよね」と彼の経歴に驚きつつ、「“恋を忘れちゃった”と言うタリーがウォーホル的だな、なんてちょっと思いました」と、落合はタリーとウォーホルの共通点を分析した。

 MCの奥浜から「影響を受けた人はいるか」という質問を投げかけられた落合は、スタイリスト・衣装デザイナーの北村道子の名前を挙げ、「ファッションデザイナーとしてデビューしてまだ新人のときに、北村道子さんに洋服を見てもらいたいなと思って、北村さんに見てもらうチャンスをいただいて。その後、北村さんが特集された本が出たときに、(アレキサンダー・)マックイーンとトム・フォードの間に誰も知らないFACETASMを2ページ突っ込んでくれたんです。“好き”と思ったことをすぐ行動に移してくれて、しかも新人も一流も関係なく、フラットな目で見てくれたのは、“こんなことってあるんだ”という驚きがありましたし、ファッションの夢を見せてもらいました」という過去のエピソードを披露。続けて、「『この服はゴミよ』とか結構言われましたけど、『それでも言ったからには愛するわよ』みたいな感じで。今でも残っている一番印象的な言葉は、“洋服を壊すな”ということ。『洋服を壊すのは誰でもできるから、ちゃんと洋服を作れるようになってから壊しなさい』と。29歳とか30歳くらいのとき、ブランドを初めてすぐに言われた言葉で、それは今でも大切にしています」とファッションデザイナーとして大切にしている言葉についても明かした。

落合宏理

 コレクションが始まる前は映画をよく観ているという落合。「自分自身何が好きだったかなとか、自分自身にとって大切なものを結構見返すことが多くて。ガス・ヴァン・サントの『エレファント』は、毎回コレクションを始める前に観て、何かを感じています。空の美しさとか青い独特の色とか、そういうのを観てるだけでいい。流しながらデザインを描くこともあるし、音楽を聞くように映画を観る感じです」と、ファッションデザイナーとして影響を受けた映画についても語った。

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