第46回日本アカデミー賞、『ある男』が8冠 妻夫木聡×安藤サクラ×窪田正孝が想いを語る
3月10日21時から第46回日本アカデミー賞の授賞式が日本テレビ系にて放送された。昨年8冠に輝いた『ドライブ・マイ・カー』の西島秀俊がVTRのナレーションを務め、有村架純と羽鳥慎一が司会を担当。過去に受賞経験があるベテランから12歳の若手まで、日本映画界を支える俳優が勢ぞろいした。
第79回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に正式出品され、第27回釜山国際映画祭のクロージング作品としても上映された『ある男』。今回の日本アカデミー賞を語るには欠かせない作品となった。まず、「情報で埋めず、グレーゾーンを残して演じた」と話した窪田正孝が初の最優秀助演男優賞を受賞。「まさかもらえると思っていなかった」と驚きを見せ、「『本人の中の深いところを撮りたい』と監督に言われた」など、現場での気持ちや役作りへの想いを明かした。「(映画は)心を温めてくれたり、言葉じゃないもので教えてくれたり、エネルギーがある」と、映画そのものと役者という仕事への感謝も見せた。
また、最優秀主演男優賞も同じく『ある男』で男の正体を調べる弁護士を演じた妻夫木聡が受賞。『悪人』以来2度目の受賞となったが、実際に舞台に立ってトロフィーを受け取ったのはこれが初めてとのことだった。山田洋二監督の言葉「“ある”っていうことが大事なんだよ」に頼ってこの役を演じたと話し、これからも日本映画を盛り上げていきたいと意気込んだ。
大きな印象を残したのは安藤サクラ。初の最優秀助演女優賞受賞となったが、受賞前に妻夫木から女優を辞めようと思っていたことを暴露されるというハプニングのような出来事が。受賞スピーチでは涙ながらに「そう思っていたことに情けなさを感じる」とコメント。優秀助演男優賞で会場にいた夫の柄本佑にも目配せをしながら、「子育てと撮影は今のところうまくできない。悩みつつ、都度家族で会議しながらみんなで協力し合って頑張れたらいいなと思っています」と正直な胸の内を語った。水卜麻美アナウンサーや『ハケンアニメ!』で優秀助演女優賞を受賞した尾野真千子も涙をこらえながら、その話を聞いているのが印象的だった。撮影現場の山梨から特急列車で家族に会いに帰ってしまうほど、家族への愛が人一倍強いことが今回の授賞式だけでも感じられた。
そして監督賞も『ある男』の石川慶が最優秀賞を受賞。この賞は「バトン」だと話し、「日本映画を繋いでいかなければならない」と述べた。編集賞、録音賞、脚本賞、そして作品賞でも受賞を果たし、妻夫木が代表してスピーチ。短編映画で活躍していた監督の長編デビュー作『愚行録』で主演を務めた経験があることから、感極まって言葉を詰まらせた。『ある男』は8部門で最多最優秀賞受賞となった。