『夕暮れに、手をつなぐ』広瀬すずは忘れがたいヒロインだった 絶望が際立つ演技力

広瀬すずだから成立した『夕暮れ』

 空豆は天才。その事実を捉えた瞬間に、“イノシシ”や“サル”と呼ばれてしまう所以の常識はずれな行動も、度重なる偶然の喜劇や悲劇もすべて天才である彼女の宿命として了解可能なものに思えてしまうからすごい。近年はフィクションであっても現実性が強く求められる傾向にあるが、非リアルな設定や展開が多くあるからこそ、心震えるような美しい瞬間が生まれる北川ドラマに広瀬の存在は欠かせなかったと改めて思う。広瀬の演技はダイナミックに思えて、実はかなり繊細だ。これは映画『怒り』や『流浪の月』でも感じたことだが、特に絶望や孤独が彼女の演技力をさらに際立たせる。

 現在の恋人に自分との思い出を話していた幼なじみの婚約者・翔太(櫻井海音)にそれまで抑えていた怒りを爆発させたとき、音が共に暮らしていた下宿先を出ていく当日、「なんて名前と?」「えぇ名前やが~」と情緒たっぷりに2人が出会った日の会話を再現したとき、音とセイラ(田辺桃子)が抱き合っているのを目撃し、雪が降る中で涙を流して座り込んだとき。空豆の複雑な思いが痛いほどに伝わる広瀬のあまりに繊細な演技が、一つひとつのシーンをさらに美しくする。

「Don’t remember days, remember moments(日々を思い出さないで瞬間を思い出して)」

 私たちはこれからも広瀬が生み出した瞬間の美しさを思い出すことだろう。

■放送情報
火曜ドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:広瀬すず、永瀬廉(King & Prince)、川上洋平([Alexandros])、松本若菜、田辺桃子、黒羽麻璃央、伊原六花、内田理央、櫻井海音、茅島成美、酒向芳、遠藤憲一、夏木マリ
脚本:北川悦吏子
演出:金井紘、山内大典(共同テレビジョン)、淵上正人(共同テレビジョン)
プロデューサー:植田博樹、関川友理、橋本芙美(共同テレビ)、久松大地(共同テレビ)
編成:三浦萌
制作協力:共同テレビジョン
製作著作:TBS
©︎TBS
公式Twitter:@yugure_tbs
公式Instagram:yugure_tbs
公式TikTok:@yugure_tbs

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