生きづらさを抱える人に届いてほしい『リエゾン』 凸凹に寄り添う山崎育三郎の眼差し

 誰かに「大丈夫、あなたはいい子だよ」って思いきり抱きしめられたい。そういう気持ちがあるなら、どうか観てほしいドラマがある。毎週金曜23時15分から放送中の『リエゾン-こどものこころ診療所-』(テレビ朝日系)だ。

 本作は主演に山崎育三郎を迎え、累計130万部を突破した雑誌『モーニング』(講談社刊)で連載中の同名漫画を映像化したもの。児童精神科を舞台に、院長の佐山卓(山崎育三郎)と研修医の遠野志保(松本穂香)がさまざまな生きづらさを抱える子どもと親にまっすぐ向き合うヒューマンドラマとなっている。

 脚本を手がけたのは、昨年末16年ぶりの続編となる劇場版が公開されたドラマ『Dr.コトー診療所』(フジテレビ系)シリーズの吉田紀子。同作で吉岡秀隆演じる主人公の“コトー先生”こと、五島健助は外科医として時に手術を行うが、本作の佐山はメスを持たない医者だ。しかし、患者の病気や障害そのものではなく、人生に寄り添うという点で両者は共通する部分がある。

 佐山が院長を務める児童精神科「さやま・こどもクリニック」にやってくるのは、多くがASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、SLD(限局性学習症)からなる発達障害のこどもたち。彼・彼女の得意なこと、苦手なことの差が大きい発達障害の特性を本作は「凸凹」と呼ぶ。その凸凹は“療育”と呼ばれる専門家による日常生活訓練などで補うことはできるけれど、決して平らになることはない。発達障害だけじゃなく、摂食障害をはじめた精神疾患も薬ですぐに治るものではなく、長期的な治療が必要となるのだ。

 じゃあ、他の人から見えづらい心の傷や困難を抱えながら、どう生きていけばいいのかという課題に精神医療の専門家としてヒントを与えながら、患者本人やその家族と共に向き合うのが佐山や志保の役目。そして、両者は凸凹を抱える当事者でもある。

 大学病院で小児科の研修中にミスを連発し、教授から医者になることは諦めろとまで言われてしまった志保。一度は医者になることを諦めかけた彼女に、「凸凹に合った生き方があるはず」「痛みを抱えているからこそ、人に寄り添えることだってある」と教えてくれたのが佐山だ。その言葉通り、志保は自分と同じ発達障害の特性を抱える子どもの心に寄り添っていく。親から不注意を咎められ、わけも分からず泣いている女の子を「大丈夫。あなたはいい子なんだから」とかつて自分がしてもらったように抱きしめるシーンに自然と涙が溢れた。本作には、こういう観ていると自分まで救われたような気分になるシーンが多々ある。

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