伊藤沙莉「明るいばかりではないことが人生は起きる」 朝ドラヒロインとしての決意を語る
NHK連続テレビ小説『虎に翼』の制作発表会見が2月22日にNHK放送センターにて開かれ、主演の伊藤沙莉、脚本の吉田恵里香、制作統括の尾崎裕和が登壇した。
2024年度前期、NHK東京が製作を務める本作は、日本初の女性弁護士で後に裁判官となった一人の女性を描くリーガルドラマだ。
伊藤が朝ドラに出演するのは、2017年度前期『ひよっこ』以来2作目。その際に様々な年齢層の視聴者に声をかけられたことで、伊藤は朝ドラの影響力と、親近感のある、生活の一部になっている作品であることを感じたという。『ひよっこ』でヒロインを演じていた有村架純の姿と同じく、「支えたい、ついていきたいと思えるようなヒロインの役割ができたら」と誓う伊藤は、今年の5月で29歳に、そして芸能生活20周年を迎える。「節目の年に、こういった素敵なお仕事をやらせていただけて嬉しいです」と喜びを噛み締めていた。
脚本を手がけるのは、NHKよるドラ『恋せぬふたり』で向田邦子賞を受賞、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京)などを手がけてきた吉田。『恋せぬふたり』でも制作統括を務めていた尾崎が最も信頼している脚本家の一人だ。吉田の叶えたいことの一つに朝ドラがあり、念願の執筆作品となる。
今回、伊藤へのヒロインオファーは昨年末に尾崎から行われた。2022年8月放送の伊藤がNHKドラマ初主演を務めた『ももさんと7人のパパゲーノ』を通じて、繊細なテーマの奥に、前向きさ、チャーミングさ、明るさを伊藤の演技から感じたことがヒロインオファーのきっかけとなっている。
ヒロインオファーを受けて、伊藤は家族にだけは事前に伝えたという。感情が忙しい家族一同は「よかったー!」と総立ちで拍手をしつつ、「浮かれちゃダメだよ」と冷静になり、「目立てばいろんな感想があるだろうから、いろんなことを言われたくなるかもしれないけど、そんなのは気にせず、やるべきことをやりなさい。楽しくできたらそれが一番いいから、いつもとやることは変わらないんだから」と声をかけてくれたと振り返る。なお、実の兄でお笑いコンビのオズワルド・伊藤俊介にだけは朝ドラヒロインについて伝えておらず、「今頃ニュースで知っていると思うんですけど……(笑)」と記者陣の笑いを誘っていた。
今回、伊藤が演じる猪爪寅子(いのつめともこ)は、日本初の女性弁護士で法曹界では人気があるという三淵嘉子をモデルにしている。五黄の寅年生まれで“トラママ”と呼ばれたということにちなみ、主人公の名前は寅子で、あだ名は“トラコ”。法律という翼を得て力強く羽ばたいていく寅子が、その強大な力に戸惑い、時には悩みながら、弱き人々のために自らの翼を正しく使えるよう、一歩ずつ成長していく姿をイメージしている。
伊藤は演じる寅子の人物像について、「道を切り開いていった強い女性ということで、たくさんの苦労に戦ってきた人だと思うので、そういった強さと弱さも含め表現できたらと思います。また、天真爛漫な方で、朝ドラですし明るさがほしいと思うんですけど、リーガルドラマという題材もそうですし、楽しい、明るいばかりではないことが人生は起きるというのを感じました。観ていてそこがドラマにもなるし、繊細に、人間味のあるキャラクターを描きたいと思うので、お芝居に関しても、自分に対しても、嘘のないように務めたいと思います」とコメント。吉田も脚本の執筆にあたって、「女性という観点だけではなく、息苦しさを感じている人に手を差し伸べてこられた方だと思っていて、私がずっと描いていきたいと思っていたテーマ」と意欲を示す。