『夕暮れに、手をつなぐ』空豆と音、“ゆっくりと変わっていく”姿に感じる別れの予感

『夕暮れに』空豆と音に感じる別れの予感

 『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)第6話では、メジャーデビューを控える音(永瀬廉)が組むユニットのボーカリストが見つかる。それは、まさかのセイラ(田辺桃子)。アリエル、改めソイ(内田理央)はユニット「ズビダバ」のメンバーとして一緒だったマンボウ(増田貴久)と結婚する道を選んだ。音の“歌姫探し”は振り出しに戻るといった折に、音はセイラの歌声と出会う。

 公園のベンチで子供たちに囲まれるなか、ハープを奏でながら『千と千尋の神隠し』の「いつも何度でも」を歌うセイラ。その慣れた様子は、子供たちに“聞かせる”といったふうにも思えるが、澄んだ、遠くにも通る声はまさに音が探し求めていたボーカリストとしての逸材。音は柔らかな笑顔で「久しぶり」とセイラに声をかける。

 音に“命の電話”を掛けてきていたセイラが公園で弾き語りをするようになった経緯はまた次回明かされるのかもしれないが、その運命の再会を目の当たりにする空豆(広瀬すず)のこの後の心境を考えるとつらい。おそらくこの時にはまだ気づいていないと思うが、空豆は第5話で電話越しにセイラの理解者として話し相手になっていた。公園に新たなボーカリストとして相応しい人がいる(明示はしていないものの)とリアルタイムでLINEしていたのは空豆であり、その再会を後押ししたことで心の奥底にある自分でも気づいていない音への気持ちが目を覚ます――というような節のシーンはこの本作には多くある。

 物語全体の折り返しを迎えている『夕暮れに、手をつなぐ』において印象的なのは、まず夕暮れのオレンジに染まる空豆、もしくは音の運命が動き出すシーン。例えば、第2話で空豆が爽介(川上洋平)と婚活パーティーを抜け出す場面であり、今回で言えば先述した音とセイラの再会がそれに当たる。一方で、今の空豆と音の何気ない日常がそう長くは続かないことは明確に示唆されている。未来の音による俯瞰的なモノローグのようなナレーションがそうだ。その刹那的な切なさと、銭湯の浴室や雪平邸の縁側で無邪気にはしゃぎ回る2人の対比、夕暮れの橙、主題歌「アルジャーノン」の〈ゆっくりと変わっていく〉のフレーズが、2人の成長と恋心、そして近づく別れを我々に予感させている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる