『舞いあがれ!』赤楚衛二×川島潤哉は理想的な関係? 作家×編集者のダメ出し問題を考察

『舞いあがれ!』作家×編集者の関係性を考察

 どうしても相聞歌を書けないと言う貴司に北條は、「心の奥までさらけ出しなよ。そんな及び腰だから、僕が求めている短歌を作れないんだよ。人の心を揺さぶる熱い短歌をね。自分でも分かってるんでしょ?」と追い打ちをかけると、貴司は「怖いんです、心の奥をさらけ出すのが。昔から人とぶつかるのが怖くて」とついに本音を打ち明ける。その後、北條は酔っぱらってやって来て、「いるんでしょ、大切な人がさ。その人の心に向かって、ど真ん中、ストレート、投げるつもりで書けよ! そういう歌が大勢の心を打つんだよ」と貴司に熱い口調で伝えた。

 ここまで貴司のことを深く考え、強く励ます北條は、貴司のような消極的な作家にとって非常にありがたい編集者なのだろう。彼は俗物的な人物などでは決してなく、短歌と歌人に愛情を注ぐ、有能で素晴らしい編集者であることが分かった。北條のおかげで、貴司は苦しんだ末に舞への想いと向き合い、「目を凝らす 見えない星を 見るように 一生かけて 君を知りたい」という相聞歌を書くことができた。

 粘り強くデラシネに通い、貴司から本音を引き出し、殻を破らせることに成功した北條。よく、作家と編集者は二人三脚で作品を作り上げると聞く。新米編集者がコミック雑誌編集部を舞台に奮闘する『重版出来!』(TBS系)でも作家と編集者との関係性が描かれ、そこでも、「漫画家だけの力では作品は売れない」という現実が取り上げられていた。

 『舞いあがれ!』の歌人・貴司と編集者・北條のように、短歌、漫画、小説などジャンルを問わず、本を売るためには編集者が作家の性質を理解し、アイデアを出しつつ、発破をかけたり、優しく励ましたりしながら、共に良い作品を作り上げる必要がある。作家と編集者の理想の関係性はそれぞれ異なり、北條のようにしつこいくらい訴えて作家の殻を破らせた方がいい場合もあれば、あまり干渉せずに見守る方がいい場合もある。作家と編集者の相性はとても大切で、貴司と北條も、結果的に良いケミストリーが生まれ、理想的な関係性となることができた。これからも、歌人として貴司がより成長していけるよう、北條と良い関係を続けていってほしい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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