『リバーサルオーケストラ』門脇麦と田中圭が生み出す緩急 “身近なクラシック”の始まり

 門脇麦が主演を務めるドラマ『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)が、1月11日よりスタートした。

 本作は、元天才ヴァイオリニストで市役所職員の谷岡初音(門脇麦)と世界で活躍するマエストロの常葉朝陽(田中圭)が、ポンコツオーケストラ「児玉交響楽団」(通称「玉響」)を立て直していく物語。脚本を手がけるのは、『最愛』(TBS系)や『彼女はキレイだった』(カンテレ・フジテレビ系)、連続テレビ小説『エール』(NHK総合)などに参加し、自身も音楽科を卒業し、ピアノ講師を務めた経歴を持つ清水友佳子。音楽にピアニストの清塚信也、演奏を神奈川フィルハーモニー管弦楽団が担当しており、放送が発表された際の清水のコメントにもある「敷居が高いと思われがちなクラシック音楽を、身近に感じて頂けるような物語」というのが作品全体から伝わってくる。(※)2月に開催される門脇麦と田中圭が出演のスペシャルコンサートは、その本気を伝える分かりやすいクラシックへの“入り口”と言えるだろう。

 第1話を観ていて感じたのは、テンポが良く、スッと入ってくるストーリー性。それは脚本の清水や演出陣の手腕も多分にあると思うが、初音と朝陽というデコボココンビのコントラストが緩急となって、まるでクラシック音楽の転調のように機能し、物語全体を盛り上げているのではないだろうか。

 初音は西さいたま市役所・広報広聴課に勤める公務員。「神童」と謳われるほどの天才ヴァイオリニストだったが、10年前に突如表舞台から姿を消した。人知れずヴァイオリン教室を開き(副業として生徒から報酬を受け取るのは違法)、ひっそり音楽に触れていられたら幸せという安定と平和を重んじる初音。しかし、彼女の前にまるで嵐のようにして現れるのが朝陽だ。

 彼は、世界を股にかけるマエストロ(指揮者)。西さいたま市長の父・常葉修介(生瀬勝久)から、新しく建設するシンフォニーホールに見合うオケに、玉響を改造するよう依頼される。地味でいるように自分をカモフラージュして、実は明るく優しい人柄の初音に対して、常にイライラしている朝陽は情け容赦がなく、身勝手な性格。プロ意識のない玉響メンバーに毒舌は止まらず、初音にも「救世主」だと半ば無理やりに広報担当のコンサートマスター(オケ奏者たちのまとめ役)として玉響に迎え入れようとする。

 だが、その強引な部分がなければ、初音の音楽人生はこのままひっそりと閉ざされたままだったかもしれない。久々にオケに入ってヴァイオリンを演奏した初音に、自然と笑みが込み上げてくる。一人では実感することのできなかった、オケで音を合わせるという喜び、理屈抜きの音楽の楽しさ。初音は言う「今までで一番楽しかったかもしれない」と。

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