『舞いあがれ!』中村靖日が放つ異質なオーラ 名バイプレーヤーの歩みを振り返る

『舞いあがれ!』中村靖日の経歴を振り返る

 福原遥がヒロインの岩倉舞を演じる連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合)が、後半戦をスタートさせた。ものづくりの町・東大阪で舞の父(高橋克典)が営む株式会社IWAKURAは変わらず経営難にある。そのIWAKURAの社員のなかで異質なオーラを静かに放っているのが俳優・中村靖日だ。経理社員・古川輝海役で、さらなる存在感を見せてきそうな中村は、昨年50歳を迎えた大阪府出身のバイプレーヤーである。

 デビューのきっかけは、武蔵野美術大学で共に映画を作っていた佐藤信介監督(『GANTZ』シリーズ、『図書館戦争』シリーズ、『今際の国のアリス』ほか)との出会い。日本映画の新しい才能を発掘するPFFアワードでグランプリを受賞し、劇場公開された佐藤監督の16mm映画『寮内厳粛』にスタッフ兼俳優として参加した。今ではアクションやSFXの印象の強い佐藤監督だが、学生時代はストーリーテリングで物語に引き込む作風で、中村も当初から絶妙な空気を持っていた。そして佐藤監督が脚本を手がけた市川準監督の『東京夜曲』や『ざわざわ下北沢』、犬童一心監督の映画『ジョゼと虎と魚たち』などに出演していく。

 やがて俳優・中村靖日の存在を、映画ファンに一躍知らしめる作品に巡り合う。2005年に公開された内田けんじ監督(『アフタースクール』『鍵泥棒のメソッド』)のサスペンス・ラブコメディ『運命じゃない人』である。本作で中村は主人公の宮田武を好演した。

 巻き込まれ型の主人公が体験する一夜の出来事を、ルービックキューブのように複数の視点から成るカラフルなピースを組み合わせて最後まで見せ切る作品で、今観ても抜群に面白い。本作はカンヌ国際映画祭批評家週間に正式出品され、国内外から高い評価と観客からの支持を得た。内田監督の手腕が素晴らしいのは言わずもがな、生真面目なサラリーマンに扮した中村がこれ以上なくハマった。吹けば飛ぶかのようでいて、中心にスンっと直立不動な中村演じる宮田がいるからこそ、よりユニークな輝きを放つ作品となったことは間違いない。

 一気に邦画ファンにとっての“気になる人”になった中村は、その後も『ハッピーフライト』『旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ』『カイジ 人生逆転ゲーム』『ステキな金縛り』などでキャリアを積み上げていく。コント&ショートドラマで構成され、沢村一樹の“セクスィー部長”を世に広めた異色のバラエティ『サラリーマンNEO』(NHK総合)ではシーズン2から参加。どこを見ても濃いキャラクターの中でも埋もれずに、2011年に公開された映画版にも出演した。

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