ユニバースの可能性も? 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』への期待

映画『スーパーマリオ』への期待

 『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』が、4月28日に劇場公開される。早くも2023年で最も注目しているという方もいるのではないだろうか。今回は制作を務めるスタジオ、イルミネーション・エンターテインメントと任天堂のコラボの意味について考えていきたい。

 イルミネーションはアメリカで2007年に設立された、比較的新しいCGアニメーションスタジオだ。代表作品として『ミニオンズ』を連想する方も多いだろう。2010年代を象徴するキャラクターの1つで、スタジオの看板だ。イルミネーション作品のオープニングロゴにも採用されており、登場作品を見たことがなくても、ミニオンというキャラクターを認知している方も多い。他にも『SING/シング』シリーズは、日本でも豪華吹き替えキャストが声を当てているということもあって、大ヒットを記録している。

 アメリカのアニメーションスタジオといえば、誰もが第一に思い浮かべるのがディズニー&ピクサーの存在だろう。こちらが今のアメリカの政治的な正しさをより追求し、多様性に満ちた、子どもたちにも安心な”正しい”メッセージを与えている。一方でイルミネーションの物語は、悪党を目指すミニオンズなどをはじめ“ちょっと悪い”を表現してきた。

 子どもたちに対して、この“ちょっと悪い”というのは、大きな魅力となる。日本で言えば『かいけつゾロリ』や『クレヨンしんちゃん』などのように、道徳的には少しだけ悪いことをしてしまうキャラクターが人気だ。大人としては子どもが真似をすると頭を抱えるシーンもあるだろうが、こういった作品も1つの多様な価値観を示している。

 アニメーションの映像技術もレベルが高く、もしかしたらアニメーション映画に興味がなければ『ミニオンズ』や『SING/シング』もディズニーやピクサーが制作していると思う方もいるかもしれない。パッと見て見分けがつかないほどに、レベルの高い映像を制作するスタジオだ。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』

 一方で、この新しいスタジオが欲しかったのが、誰にでもわかるような人気キャラクターの存在だろう。やはりキャラクターの知名度というのは、とても重要だ。ミニオンなどの人気キャラクターがいるとはいえ、ディズニーに対抗するためには、知名度のあるIP(キャラクターや作品などの知的財産)がいくらあっても支障がない。

 そのイルミネーションからしたら、任天堂と共同タッグを組めるのは、まさに理想系といえるだろう。ご存知のように日本を代表するゲーム会社である任天堂は、まさに世界的知名度を誇るIPを多く有している。

 その任天堂は、近年さらにキャラクタービジネスに力を入れてきている。Nintendo Switchは今でも世界的な人気を誇る主力製品だが、それ以前のWii Uが主力として発売されていた2016年ごろでは、一部には販売不振の声もあがっていた。そこでゲームビジネスだけではなく、豊富なIPを開放し、映画やテーマパークも含めた、ディズニーのような総合的なエンターテイメントビジネス形態を模索しはじめたのが近年の流れだ。(※)

 しかし、任天堂も映画制作に造詣が深いわけではない。以前には実写版マリオが公開されたこともあるが、特にアニメ制作となるとそのハードルは高い。そこで登場するのが、世界的に通用するIPを探していたイルミネーションの存在だ。

『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』ティザー予告

 すでに一部映像がトレーラーとして公開されているが、そちらを観ても、まさにマリオの世界を映像化していて、文句のない仕上がりとなっている。また初の3D作品として発表され、その後の箱庭的なアクションゲームとして後世に大きな影響を与えた『スーパーマリオ64』などの過去作へのオマージュも見受けられるのだ。

 公開された映像ではキノコ王国を歩くマリオが、ピーチの暮らすピーチ城に向かう場面がある。動く床などのお馴染みのギミックに加えて、ピーチ城に着いた時の外観が『スーパーマリオ64』で、初めてピーチ城を見上げた時の衝撃を連想させる。マリオに親しんだ多くの世代のプレイヤーが、そこに過去のマリオの記憶を見つけるような映像に仕上がっているのではないか。

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