畠中祐×武内駿輔が語る、『ルパン』の“ジャズ”な魅力 演技は「グルーヴ感を大事にした」

畠中祐×武内駿輔が語る『ルパン』の魅力

 1967年の連載開始から、日本を代表するエンタメ作品として世代を超え愛されてきた、モンキー・パンチの人気漫画『ルパン三世』。主人公ルパンをはじめとした個性豊かなキャラクターたちの活躍に心を踊らせてきたファンも多いだろう。12月16日よりDMM TVにて独占配信中のアニメ『LUPIN ZERO』では、原作連載当初の昭和30年(1960年)代を舞台に、ルパンの少年時代が描かれる。

 そこで少年時代のルパンと次元を演じる畠中祐と武内駿輔の2人に、それぞれ本作への想いやアフレコ時のエピソード、役作りのために行ったことなどを語ってもらった。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

武内駿輔「ルパンは“ジャズ”だと考えている」

――今回の出演が決まった時の率直な気持ちを聞かせてください。

武内駿輔(以下、武内):「自分の道を信じてやってきてよかったな」と思いました。僕はオーディションを受けた段階で、(畠中)祐しかルパン役をできないと思っていたので、祐がルパンをやると決まって、僕はもうワクワクと安心感しかなかったです。

畠中祐(以下、畠中):僕は作品として過去のルパンに挑むための、そして新しいルパンを本気で作っていくための武内くんの抜擢だと思っていて。率直に、ビビるなあと思いました(笑)。あとは、オーディションの段階からこの作品には感動させられました。

武内 :セリフを喋れるだけで嬉しかったって言ってたよね。

畠中:オーディションの最後に「今から読んでください」って渡された紙に「俺の名はルパン!」と次回予告のルパンのセリフが書いてあって。この台詞は歴代の山田康雄さんと栗田貫一さんしか口にしてはいけないみたいな意識が、声優であれば特にあると思うんです。だからこそ、「なんて粋なオーディションなんだ!」と思いました。

畠中祐
畠中祐

――まずは喜びよりも歴代のルパンに対するプレッシャーが大きかったということですか?

畠中:はい、実際はそうでした。でも、そのプレッシャーを超えて少年時代のルパンへの向き合い方に対して試行錯誤を重ねていきました。

――武内さんはその辺りのプレッシャーは感じましたか?

武内:全然(笑)。“プレッシャー係”は祐なので(笑)。祐の性格もよく知っているし、僕がプレッシャーを感じてしまったら作業が苦しくなってしまうかなと。出口が見えなくなってしまうのは、ルパンらしくないと思ったんです。僕はルパンは「ジャズ」だと考えていて、見てるだけで仕草を真似したくなる、体を動かしたくなるのが作品の魅力だと思っています。もちろんストーリー構成も魅力的です。でも本質は、やっぱり人を楽しませるエンターテインメント性にあるんじゃないかな。だから音楽であり、ジャズだと思うんです。キャラを理解するために、とりあえず全キャラをモノマネしてみたんですけど……不二子以外のね(笑)。その音声を祐に送ってみたりとか、遊びも入れました。

畠中:ルパンのモノマネ、超似てました。僕より上手いかも(笑)。

武内 :役作りというより趣味のレベルで、ただ楽しもうと思っていました。祐に背負わせちゃって申し訳ないけど「それはルパンなんだからしょうがないよね」って(笑)。

畠中:最初はプレッシャーから「どうしよう」という気持ちで過去の『ルパン三世』を観ていたんですけど、やっぱり面白いですよね。山田さんのお芝居を含め、あの時代の掛け合いに惹かれます。改めて、オーディションでルパンにもう一度出会わせてもらったなと思いました。

畠中祐「(ルパンは)すごく人間くさい人物」

――それぞれ、少年時代のルパンと次元の役作りをするにあたって、どのようなアプローチを試みましたか?

畠中:監督からは、今までのルパンらしさももちろん大事だけど、少年時代だからこそ、完全ではなくてまだまだ心が揺れたり、青臭かったり……色々な表情のルパンと次元が見たい、と伝えられていました。ただ、実際には過去のルパンの完全なトレースがそもそも難しくて、どうしても僅かな綻びが見える。そこが、少年時代のルパンらしさに繋がっていたらいいなとは思っていました。

武内 :僕は過去のキャラのモノマネで終わらせないように、徹底してそのキャラクターを探ることに意識を向けていました。ルパンと次元を演じるということは山田康雄さんと小林清志さんを意識せざるを得ない、お二人の生き様を理解するということでもあると思います。根掘り葉掘り探って、徹底的に師がやったことを模倣しました。例えば、次元の言葉の語尾が尻下がりになっているパターンをとことん研究して、自分なりの教科書を作ったり。この教科書を元に、新しい次元を探っていく作業をしました。次元を知るためにはルパンを知らないといけないので、『ルパン三世 PART3』までのアニメシリーズを全部見返して、メモをとって、共有して……。そこからさらに祐から返ってきた意見も含めてすり合わせて。当日までお互い連絡とりながら、バランス感にはこだわりました。僕ら自身のアプローチがそれぞれ違えど、二人三脚で歩む姿勢があれば、より彼らに命を吹き込むことができるかな、と。

畠中祐、武内駿輔
(左から)畠中祐、武内駿輔

畠中:ルパンを知ることは山田さんを知ることでもあるので、身が引き締まりました。昔のインタビューを読んで垣間見える山田さんの信念をみて、この姿勢でやってみようと思いましたね。この作品がジャズだというのなら、そのグルーヴ感はきっと掛け合いの中で大事になるし。

武内 :ジャズってまず理論を理解しないといけないんですよ。まず徹底的に音楽理論を勉強した上で、その中でルールを超えるかのようなパフォーマンスができるかを大事にしているんですよね。その感覚の再現性をアフレコでは大切にできたかなと思います。

畠中:武内に、「ジャズを知るためにはまずクラシックだね」と言われ、「この道のりは長いぞ〜!」と思いました(笑)。

――それぞれアフレコをしたキャラクターと似ていると思う点はありますか?

武内 :シャイで、ロマンチストなところですかね。僕は声優としての仕事に、僕なりの美学を持っていて、それが最初の「自分の道を信じてやってきてよかったな」ってところに繋がります。あとは“こちらが似せる”という意味では、アフレコが始まる1カ月前から、バケットハットとサングラスをして次元を意識していました。

畠中:僕が演じる少年時代のルパンは、まだルパンの仮面を被りきれていないルパンだと思っていて。あくまで予想ですが、ルパンが仮面を被っている理由は、彼の中での“境界線”があるのかなと考えました。本当のルパンは人見知りなのかもしれないし、心の中に踏み込まれたくない領域があるのかもしれない。だから山田さんの声にも、切なさが混じっているシーンもあれば、あえて明るくしたんだろうなと感じるシーンもあるのだと解釈しました。でも、仮面が外れたところではすごく人間くさい人物だとも思うんです。そのギャップに、共感する部分がありました。

武内 :心の壁が何枚もあるし、繊細なところは似ているよね。悩み事も話してくれるけど、自分の中できちんと納得できるまで、答えはあまり僕らに教えてくれない(笑)。

畠中:そんなことないって(笑)。でも寂しいわけじゃないけど、すごく悩みますね。相談先がわからないから。誰かに評価をもらっても、満足してしまったらそこで終わってしまう気がします。ルパンを演じていたとき、山田さんもとても孤独だったのかもしれないですね。

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