川口春奈×目黒蓮『silent』がドラマファン以外からも熱烈な人気を集める理由

『silent』なぜドラマファンも支持?

交差する過去と未来

 『silent』の特徴として、登場人物の学生時代の回想と現在の時系列がシーンごとに行き来する点が挙げられる。似たような過去の回想を含む構成は映画『花束みたいな恋をした』(2021年)、『ちょっと思い出しただけ』(2022年)など、近年の人気作にも共通している。

 上記の作品と比較するならば、『silent』の場合は想、湊斗(鈴鹿央士)、紬の三角関係に加えて、奈々(夏帆)と春尾(風間俊介)の過去の物語も平行世界として描かれるなど、視点の切り替えが多い。その点も踏まえて、エピソードごとに物語の視点を切り替えて整理してくれるところが、普段ドラマを見慣れていない人にとっても親切であると感じた。

 もちろん、限られた視点のみで語られる物語や、時系列が入り組むからこそ面白さが生まれる作品もある。しかし、ただでさえ複雑な人間関係の物語に余計なノイズを持ち込まない“観やすさ”への配慮は、日本中で『silent』が受け入れられている理由の一つだろう。その点において、筆者も毎話安心して『silent』の放送を心待ちにしている。

 『silent』は、静けさが生む美しさを教えてくれた。それは、日々の中での束の間の癒しであり、自らの心の機微に向き合う時間でもあった。ひたむきに誰かを想うまっすぐな物語を、時間をかけてゆっくりと自分の中に落としていく過程は、忙しない毎日を送る私達にとって治療のような作業であったのではないかと思う。

 『silent』はある人にとっては傷を癒す物語であり、また別の人にとっては耐え難い痛みを想起させてしまうような厳しさを孕んだ物語だ。それでもあらゆる人が『silent』に関心を寄せてやまないのは、他人事では片付けられない何かがそこにあるからに違いない。

 耳を澄まし、大切な人の心の動きに敏感でありたい。本作に込められたそんな優しい願いが、生活の中に眠る私たちのふとした感情を揺り起こし『silent』の世界観を立体的にする。微熱の温度感で響く『silent』の残した余韻は、私たちをこの先も見守り続けてくれるだろう。

■放送情報
木曜劇場『silent』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:川口春奈、目黒蓮(Snow Man)、鈴鹿央士、桜田ひより、板垣李光人、夏帆、風間俊介、篠原涼子ほか
脚本:生方美久
演出:風間太樹
プロデュース:村瀬健
音楽:得田真裕
制作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/silent/
公式Twitter:https://twitter.com/silent_fujitv
公式Instagram:https://www.instagram.com/silent_fujitv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@silent_fujitv

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