『鬼滅の刃』の正義は“潔癖さ”にあり 今こそ見直したい、煉獄さんのヒーロー像

公開から2年経ってこそ際立つ、『鬼滅の刃』のヒーロー像

 猗窩座と煉獄の鬼気迫るアクションシーンでは、炎の呼吸の“赤”と猗窩座が使う血鬼術の破壊殺の“青”の対比も相まって、その迫力に圧倒される。そしてこの猗窩座と煉獄の「真逆の色」のぶつかり合いこそ、鬼滅の刃が生み出す正義の在り方の象徴でもあるように感じられた。

 『無限列車編』公開当初の2020年から2年の間には、劇場版を含む人気アニメ作品や映画の公開が相次いだ。いわゆる「鬼狩り」のような形で妖怪や異形の化物と戦う人気アニメは近年増え続け、その最たる例といえば『呪術廻戦』、直近であれば現在放送中の『チェンソーマン』なども含まれるだろう。

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 これらの人気作を踏まえた上で、今だからこそ「無限列車編」を見返して思うのは、『鬼滅の刃』の求めるヒーロー像が煉獄のキャラクター性に結実しているという点だ。もちろん主役は炭治郎であるが、まだ実力面で煉獄に及ばない炭治郎は彼の意志を背負うことによって、より成長角度を高めていく。

 『呪術廻戦』の虎杖は宿儺の力を借り、『チェンソーマン』のデンジはチェンソーの悪魔であるポチタの力を借りる。このようなヒーローが正義と対峙すべき悪の力と融合するキャラクターは、『東京喰種トーキョーグール』の金木や『進撃の巨人』のエレンを含め過去にも系譜として存在し、絶大な人気を集めてきた。

 しかし、『鬼滅の刃』の柱たちは鬼の力を自らの意思で借りることはない。鬼の力に頼った肉体強化による強さは、煉獄の言葉を借りれば「価値基準が違う」ことになる。猗窩座のような悪はたとえ大義を抱いていたとしても、ストーリー上は絶対悪のまま、正義の真逆の存在として君臨し続けるのだ。

 近年人気のダークヒーローを貶めるわけでは全くないが、この『鬼滅の刃』のヒーローの倫理観へのこだわりこそが、煉獄のような燦然と輝く完全無欠の正義を生み出しているのだろう。前向きで明るく、弱き者にも手を差し伸べる「強さ」を持つヒーローが仲間と共に悪を断つ。『鬼滅の刃』が社会現象となり、老若男女、とくにファミリー層からも広く愛される理由はここにあるのではないか。

 煉獄と猗窩座という対照的な2つの強さの激闘に思わず息を呑む『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。本作がなぜこれほどまでに多くの人を惹きつけたのか、更なるヒット作が続く今だからこそ、振り返って得られる新しい気付きがあるはずだ。本作から『鬼滅の刃』の魅力を改めて考えてみて欲しい。

『劇場版「 #鬼滅の刃 」無限列車編』公開中PV第2弾

■放送情報
『「鬼滅の刃」無限列車編 特別放送』
フジテレビ系にて、12月10日(金)放送

『テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編』第一話
12月10日(土) 18:30~19:00放送

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
12月10日(土) 19:00~21:24放送
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二、矢中 勝、樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
製作:アニプレックス、集英社、ufotable
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com/anime/katanakajinosatohen/
公式Twitter:https://twitter.com/kimetsu_off

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