「UNDERGROUND CINEMA FESTIVAL’22」はサイケで最高な映画祭 いざアングラの世界へ

週末はアンダーグラウンド映画祭に行こう

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替わりでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は米雑誌『PLAYBOY』の1960年代あたりのバックナンバーを集めている間瀬が「UNDERGROUND CINEMA FESTIVAL’22」をプッシュします。

「UNDERGROUND CINEMA FESTIVAL’22」

 11月26日から12月25日にかけて、全国4都市にてアンダーグラウンド映画の祭典が開催される。テーマは「サイケデリックと越境の旅」。このフレーズは、普段からアンダーグラウンド的精神でいる人が見れば、「おっ、面白そうな映画祭やるじゃん!」といった反応になるだろうし、全くそんな精神性を持ち合わせていない人にとってはアヤシイ匂いがプンプン漂うテーマだろう。筆者はといえば、平日はエンタメの編集者として“まとも”に働きつつも、休日は“アンダーグラウンド的な”友人と遊ぶこともしばしば。そこで「地上」と「地下」を繋ぐ架け橋になろうと思い、本映画祭を紹介しよう。

 「アンダーグラウンド映画」について語る前に、まずは筆者の極私的な体験を伝えたい。インドを旅していた大学生の頃、ある瞑想センターで「ヴィパッサナー瞑想」と呼ばれる、朝6時から夜8時まで一言も喋らずに10日間瞑想をし続ける体験をした。人間、そんなに瞑想をし続けるとどうなってしまうのか。筆者の場合は、最初はとりとめのないことを勝手に考えてしまい、心がざわついていた。けれど数日経つと、意識はありつつも何も考えないでいられる時間が徐々に増えていき、後半になれば常に思考が研ぎ澄まされているような感覚になった。そして9日目、全身が鳥肌が立つような感覚とともに、「フロー」と呼ばれる状態に入り……。

 ……というような、少し特殊な体験をしたことがある。いま筆者は自らの精神の体験を文章の形で表現したが、これを映画の形で届けようとしたのが「アンダーグラウンド映画」だ、と雑に説明しても間違いではないだろう(もちろん“アンダーグラウンド”にはきちんとした定義と歴史がある。ここでは詳細な説明は省略する)。つまり、何も意識せずに生きていると気づけないことに気づいた人による映像表現であり、その表現を追求した結果、現行の制度や慣習への批判や皮肉、もしくは自身の体験の具体化などを目的とした映画が多く作られてきたのだろう。

 そんな「アンダーグラウンド映画」が全19作品、7プログラム上映される本映画祭。筆者は『アンダーグラウンド・イン・N.Y.』を事前に試写で観た。本作は、1970年代のニューヨークにおけるアンダーグラウンドのシーンや空気感を、小劇場で行われていたパフォーマンスやインタビューを中心にドキュメンタリーの形で映し出す。本作にはドイツの文化政策への批判やアンディ・ウォーホルへの皮肉などの意図が込められているが、筆者にとっては何よりも舞台で自由にパフォーマンスをする俳優や、その舞台の監督の情熱に心を動かされた。

 こうした作品を観ると「自由な表現とは何なのか」について思いが及ぶ。「型にはまらないこと」「他人の目を気にしないこと」……様々思いつくが、そういったことは精神的な自由を求める“手段”でしかない。しかし劇中で登場する彼らが、自分の感覚を真っ直ぐに伝えようとしている姿を見ると、本当の自由とはまさにそうした“ひたむきさ”の中にのみ宿るのだと実感する。

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