『舞いあがれ!』新章突入前に必須だった幼なじみ3人の自立 “気づき”を描く脚本を紐解く

『舞いあがれ!』“気づき”を描く脚本

 舞は、船大工の豪(哀川翔)から、めぐみ(永作博美)と浩太(高橋克典)が結婚の許しを得に祥子のもとを訪れた、24年前の逸話を聞かされる。当時の祥子の「親心」と「後悔」を目の当たりにし、舞は初めてめぐみの気持ちに気づく。そして、改めて両親と向き合い、人生をかけてパイロットをやりたいのだと話す。我が娘が、たくさんの人の命を預かる厳しい仕事であり、そのうえ男社会のパイロットという職業をやっていけるとは思えないめぐみ。しかし舞は、厳しいからこそ挑戦してみたいのだという。

 体が弱く、すぐに熱を出していた子ども時代、五島の祥子のもとに預けられた舞。その数カ月の暮らしの中で、祥子から「自立」を学び、「かっこいいばんば」の背中を見て「強くなりたい」と思った。そして東大阪に帰ってからも、夢に向かう父の奮闘と、それを支えて働く母の背中を見て、人生をかけた仕事をできることの「尊さ」を学んだ。だから、「自分がほんまに好きな仕事をやりたい」と心から思った。舞がこの胸の内を明かしたときの、「娘がそんなことを考えていたなんて、思いもしなかった」という、めぐみの嬉しそうな表情が忘れられない。

 そして祥子もまた、自分の気持ちをしっかり言えるようになった舞の成長を見て、24年前のめぐみの決意に思いを馳せる。その後のめぐみの覚悟、浩太とともに東大阪の地で踏ん張って、めぐみ自身の力で築き上げた幸せ。それを悟り、祥子はめぐみに詫びる。「あん時、めぐみの話ば、ちゃんと聞いてやればよかった。すまんかったね」。

 幼ななじみ3人組の「気づき」と「精神的自立」をテーマとした第7週では、同時に、親側の「気づき」と「精神的子離れ」も描かれていた。舞を介して互いをわかり合った、めぐみと祥子。貴司が「ほんまの自分の居場所」を希求していることを初めて知り、手を離して見送る覚悟を決めた雪乃と勝(山口智充)。自分が想像していた以上に、久留美が苦労して悩んでいたことを知らされた久子。

 親の背中を見て育った子は、いつの間にか自分の足で立ち、親が知っている「我が子」のスケールからはみ出している。視聴者も、それぞれの親たちの次に、3人の明るい未来を願ってやまない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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