『窓辺にて』玉城ティナのあどけなさが観客を虜に 純真な笑顔が“大人の恋”に華を添える

『窓辺にて』玉城ティナが大人の恋に添えた華

光の指輪をかざすシーンで見せた留亜の純粋な無邪気さ

 さらにいうならば玉城の演技の中で多くの人が印象に残っているであろう、光の指輪をかざすシーンで留亜の純粋な無邪気さを垣間見た。指輪というのは「好き」から始まった恋の終着点の一つの形として贈られる物でもあるが、今泉作品の中で度重なるモチーフとして扱われる不倫や浮気と言ったテーマとしては、関係性を現実に引き戻すアイテムでもある。

 本作も含め、一般的には表に出せない関係性を否定せずに葛藤するキャラクターごとまるっと包んでいくところが今泉作品の魅力であるが、該当のシーンは翳りのない留亜の純真な笑顔を切り取った美しすぎる画であった。

 監督と玉城がこだわった留亜のあどけなさと本物の重さを伴わない光の指輪、喫茶店に流れる穏やかな雰囲気……その全てが留亜の背負う真っ直ぐな「好き」の在り方を象徴しているようだった。このような登場人物が背負う「好き」の在り方は、本の栞のようにところどころに挟まれて物語に滲み出ている。

窓辺にて

 本作を観た後「好きってなんだろう」と考えずにはいられなくなった。いつか時間が経って自分なりにその答えを見つけたそのときに、この作品がどう映るのか、もう一度観たいと強く思う。しかし、きっと私たちがどんな答えを出しても『窓辺にて』はあらゆる大人の恋愛譚に優しく寄り添って、背中をそっと押してくれるのだろう。

■公開情報
『窓辺にて』
全国公開中
出演:稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、志田未来、佐々木詩音
監督・脚本:今泉力哉
音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
主題歌:スカート「窓辺にて」(ポニーキャニオン/IRORI Records)
配給:東京テアトル
©︎2022「窓辺にて」製作委員会

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