福原遥が妬まれない『舞いあがれ!』が描くもの 八木の短歌に込められた人生の本質

舞が妬まれない『舞いあがれ!』が描くもの

 “朝ドラ”ことNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第6週「スワン号の奇跡」ではいよいよ琵琶湖で記録飛行に挑戦。なにわバードマンのメンバーたちの夢と努力の結晶・スワン号を舞(福原遥)が背負って舞いあがる!

 狭いコクピットに熱がこもり体力を消耗するが、「みんなの夢背負ってるねん」と踏ん張る舞に、同期の部員が彼女を気遣って空けておいた穴から風が吹き込んでくるところは感動場面であった。が、舞の飛行は10分で終了し、あえなく着水。記録には届かない。記録更新ができれば万々歳だがそれで満足して終わってしまうので、ここは悔いが残る結果になることは致し方ないだろう。

 記録は更新できなくても、みんなで作った飛行機が一時は壊れてしまったけれど、作り直してみんなで飛ばすことができただけで「奇跡」。

 第27話、記録飛行の前日、みんなでたこやきパーティーをしながら「明日全員が集合してスワン号を飛ばす、ただそれだけのことたい。けどそれを奇跡って言うんじゃなかとか」と語る刈谷(高杉真宙)。奇跡とは突然、いいことが起こるのではなく、その前にどれだけのことを積み重ねたか、奇跡とは軌跡のことなのだ。

 舞は空を飛ぶ快感に目覚め、パイロットになりたいと思うようになる。航空工学の勉強をやめて航空学校に入り直そうとする舞。なかなか立派な決断である。

 大学時代はモラトリアム、社会人になる前の余白の時間とも言われるが、実のところ、大学のランクや学部によってすでに将来は規定されてしまっていることが多々ある。だいたい見えてしまった己の未来を見ずに済む時間というほうが正しいだろう。だからこそ空(新名基浩)は長いこと留年を繰り返していたのだとも思う。なかには奮起して勉強して大学や学部を変える者もいる。そのひとりとなった舞は、いつだって人は自分の将来を考え直し、やり直すことができるという希望を体現する存在となる。

 勉強と学費を稼ぐためのバイトが忙しくて来年の記録飛行の準備に関わっている時間がとれなくなってきた舞は、思い切って休部を申し出る。次はいよいよ由良(吉谷彩子)がパイロットのリベンジを行うことになったが、中心で活躍していた部員も減って心もとない状況で舞は自分のやりたいことを優先する。

 子供時代の舞だったら遠慮して由良を飛ばせてから自分のやりたいことをやろうとしそうだけれど、いまの舞は自分に正直。でもこれ、由良でなく舞が2年連続パイロットになったらどうなっていたのだろうと考えるのは無粋であるが……。パイロットになれない分、夢が広がってしまったともいえるだろう。

 第6週はがぜん、舞とその周囲の人たちの差異が強調された。野球をやっていて男性と体格差に悩んだすえ、男女差ではなく個人の違いに沿って作られる人力飛行機に夢を託したが、骨折によってまだ空を飛ぶ夢は果たせていない由良。そのうえ、身長制限で航空機のパイロットにはなれないという現実に直面している。一方、舞は、身長差もセーフで航空機のパイロットを目指す。

 由良の叶えられない夢を舞がどんどん叶えていく。だが由良はネガティブにならず常に舞の前で堂々としている。

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