『パラレル・マザーズ』ペネロペ・クルスの葛藤が見事 新鮮な切り口で描いた“家族愛”

『パラレル・マザーズ』新鮮に描いた家族愛

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、最近新卒の頃の同期と朝まで飲み明かした間瀬が『パラレル・マザーズ』をプッシュします。

『パラレル・マザーズ』

 新卒で入った会社の研修で、「自分の歩んできた人生を同期にプレゼンする」というものがあった(思い返せば嫌な研修だ)。そこで私は横向きに線を一本引いて、左端に自分の生まれた年、右端に「現在」と書き記し、その中ほどにそれまで自分がしてきた大きい決断や転機などを記載して、ひと通り解説した。そのときは私自身も自分のことを上手く説明できたように思っていたが、どうやら人生とはそんな線一本で語れるようなものではないらしい。というのが、本作を通して考えさせられたことだった。

 本作は大きく「出生児の取り違え」と「スペイン内乱」の2つのテーマが描かれ、ペネロペ・クルス演じる主人公ジャニスの葛藤を通じて、“家族愛”や“歴史認識”について観客にメッセージを問いかける。誰かの人生の始まりは必ずその親の人生と繋がっていること、そして私たちは「時代」という大きな流れの上で生きていることを忘れてはならないのだ。

 「出生児の取り違え」をテーマにした作品は『そして父になる』など数あれど、本作ではもう1つ連続して起こる“悲劇”、そしてジャニスに関わる人々の振る舞いとその変化する関係性によってテーマとしての新鮮さが保たれている。そんなペドロ・アルモドバル監督のシンプルながらも複雑なメッセージ性を持ったシナリオは、ペネロペ・クルスの機微を捉えた演技によって完成されていたと言える。提示されるいくつものメッセージを違和感なく受け取れていたのは、まさにこの2人のタッグだったからとしか言いようがない。

『パラレル・マザーズ』ペドロ・アルモドバル監督とペネロペ・クルスのコメント到着

11月3日に公開される『パラレル・マザーズ』より、ペドロ・アルモドバル監督とペネロペ・クルスのコメントが到着。あわせてメイキング…

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