『パラレル・マザーズ』ペネロペ・クルスの葛藤が見事 新鮮な切り口で描いた“家族愛”
そしてもう1つ描かれるテーマ、「スペイン内乱」について。なぜこのテーマが物語に入ってくるのか、初めこそ不思議に感じたものの、こうした時間の“縦軸”が入ることでジャニスの葛藤は時代性を帯びて深みを増していた。スペイン生まれのアルモドバル監督がこのテーマそのものを映画で扱いたかった、という側面ももちろんあるだろうが、母娘の物語と歴史認識の話がリンクする構成が秀逸だった。
ただ、多くの日本生まれの方はスペイン内乱についてそこまで詳しくないはずだ。知識がなくとも別に問題はないけれど(経験談)、Wikipediaには色々と衝撃的な内容が記載されているため、一読しておくのをお勧めしたい。
2つのテーマに絞ってお勧めをしているが、「シスターフッド」や「父子関係」など、この映画にはもっと語る余地がある。ただ観終わった後、誰しもが自分や親、そして子供の人生について考え直したくなるはずだ。筆者も視聴後に実家の母親と電話をした。たまには腰を据えて、大切な人と人生について振り返ってみるのも悪くない。
■公開情報
『パラレル・マザーズ』
ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中
出演:ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
配給:キノフィルムズ
提供:木下グループ
2021/スペイン・フランス/スペイン語/123分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/アメリカンビスタ/原題:Parallel Mothers/字幕翻訳:松浦美奈
©︎Remotamente Films AIE & El Deseo DASLU
公式サイト:pm-movie.jp
公式Twitter:@pm_movie_jp