『相棒』事件解決のその先を描く綿密な脚本 矢柴俊博&長村航希の秀逸な演技も

『相棒』事件解決のその先を描く綿密な脚本

 「遺書」と書かれた封筒に、ロープを手にする男。11月2日放送の『相棒 season21』(テレビ朝日系)第4話は冒頭から衝撃的な映像から始まった。自殺を考えているのであろう、この男は一体何者で、何があって自殺を考えるにまで至ってしまっているのだろう。今回、右京(水谷豊)と亀山(寺脇康文)は別行動を取りながら、この男とそれに関連する事件について探っていくこととなる。

 きっかけは右京と亀山が、乗り込んだタクシーで見つけた、血のついた1本のマフラーだった。即座に不穏な空気を察した右京が運転手から直前の乗客の話を聞くと、堂島(矢柴俊博)というその男は帰宅前、唐突にロープを買っていたことが判明。右京は、堂島が何らかの事件に関係し、死を覚悟していると考え、警察とは名乗らず、身分を隠して接触を図る。一方、亀山は、右京の指示に従い、堂島が関係したと思われる事件の調査を開始する。

 家を出た堂島が向かったのは、一軒のバー。そこで堂島は、準備をしていないというカレーを執拗に頼んでいた。今日、どうしても食べたいのだという。右京はそんな堂島に優しく語りかけ、カレーの材料の買い出しにまで一緒に行き、彼の足取りのヒントを掴み、亀山へ伝えていくのだった。そして亀山は、その情報をもとに堂島が通っていたクラブや最近、よく一緒にいるという若い女のアパートを調べた。さらには、その若い女と付き合っていて、実は連続強盗犯で指名手配されているという金髪の男と堂島が言い争っていたことを突き止めた。今回も、右京と亀山の名バディ感が遺憾無く発揮され、次々と堂島の周辺が明らかとなっていったのだった。

 ここで圧巻だったのは、堂島の“何者なのかわからない”演技だ。堂島は青山からタクシーに乗り、自宅に向かったことがわかっているので、何かがあったとすれば青山で、右京が青山で事件があったことを匂わせれば、明らかに動揺を見せていることから、堂島に何か心当たりがあることは明白だった。だが、この時点で、堂島が誰かを殺してしまったのか、何か事件に巻き込まれてしまったのかが全くわからないのだ。また、堂島のなんとしてでもカレーを食べたいという行動から、おそらくカレーを最後の晩餐として自殺しようとしていることはわかるのだが、その理由も不明だ。決定的なボロを出さず、のらりくらりとした堂島の態度が、話の展開の見えなさと相まって、なんだかとても不気味に感じられた。

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