『ONE PIECE FILM Z』で描かれたルフィの“覚悟”とは? 大人に刺さる物語の魅力

『FILM Z』は大人にこそ刺さる

“Z”というキャラクターの深み

 Zというキャラが立っていることも同作を面白くしている要素だろう。Zの素性はガープやクザンの口から開かれるため説得力がある。映画の場合、どうしてもその映画にしか登場しないキャラが、同じくそこでしか登場しないキャラを説明するケースが珍しくなく、いまいちそのキャラの全体像が捉えきれない。しかし、お馴染みのキャラが解説してくれることにより、そのキャラの深みを容易に理解できる。

 加えて、ZがNEO海軍を立ち上げた経緯がとても丁寧に語られており、その内容も家族を海賊に殺された恨み、自身が手塩にかけて育てた新兵を殺した海賊を七武海として招き入れた、など共感しやすい。『FILM Z』は子供向けというよりも、むしろ家庭を持ったり、会社で部下を指導する立場だったりなど、人生の酸いも甘いも知る30代以上に刺さるのではないか。

本作で垣間見えるルフィの“覚悟”

 最後に本作のルフィについて話したい。ルフィは仲間のために、困っている人のために戦うことが多いが、『FILM Z』ではただただ“Zを倒したい”という気持ちだけで、2度も再戦している。『FILM Z』は麦わらの一味が新世界に進出したばかりの物語であり、ルフィの中では「Zを倒せないようではこの先戦い抜くことはできない」という思いがあったことが伺える。

 ルフィの意地、なによりZの意地が感じられるからこそ、バトルシーンが一段も二段も熱を帯びる。2人の生き様を目に焼き付けたい。

■放送情報
 『ONE PIECE FILM Z』
フジテレビ系にて、10月29日(土) 21:00~23:10放送 
声の出演:田中真弓、中井和哉、岡村明美、山口勝平、平田広明、大谷育江、山口由里子、矢尾一樹、チョー、大塚芳忠、篠原涼子、香川照之
原作・総合プロデューサー:尾田栄一郎
脚本:鈴木おさむ
監督:長峯達也
オープニングテーマ:中田ヤスタカ
W主題歌:アヴリル・ラヴィーン
©尾田栄一郎/2012「ワンピース」製作委員会

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