『アダムス・ファミリー2』と人種問題 悪趣味キャンプが象徴する地獄への痛快な“反撃”

『アダムス・ファミリー2』と人種問題

 究極を言えば、アダムス家はモラルがあって良識的で、正しくあろうとする家族ではない。そこもジョークを捉える上で一つ記憶の隅に置いておかなければいけないのだが、彼らはいつだって彼らなりにマイノリティの味方であることを『アダムス・ファミリー2』は描いたように思える。それが、あのキャンプの劇での「反乱」だ。アマンダ演じる白人が、白人にとって都合の良い“歴史”を語る。しかし、それに対して台本を無視し、先住民にとっての“真実の歴史”を語るウェンズデー。裕福な白人が都合の良いように事実を曲げて、被害者づらしてきたことを罵るかのように、彼女率いるチペワ族が一斉に反撃に出る。それは同調圧力を押し付けられた挙句の果てに、マイノリティと“位置づけられた”者たちの逆襲でもあるのだ。一切の慈悲も抜かりもないのが何とも気持ち良い、素敵な本作のハイライトシーンだ。

 ジョーン・キューザック(そして吹き替えの小宮和枝)の怪演光る殺人鬼デビーも、あまりにサイコでダークで魅力的なキャラクターだ。ある意味アダムス家のメンバーに馴染める素質があった彼女も、やはり“奪う側の金髪の白人”としてキャンプの物語と並行して描かれているのが興味深い。

 『アダムス・ファミリー』のラストで発覚したモーティシアの妊娠から繋がり、赤ちゃん問題とフェスターの結婚騒動を前作からスピードアップしたテンポで描いた本作。全世界興行収入は前作より落ち込んだが、日本の配給収入は6億から8億5000万円にアップ。人気作となり、もちろん続編の製作も決まっていたが1994年、ゴメズ役のラウル・ジュリアが胃癌と脳卒中を併発し、急逝した。

 彼は本シリーズが公開されてから、外に出ると「ゴメズ・アダムス」として人々に気づいてもらえるようになったという。認識されるほど人気を博したこの役が本人にとっては意味深く、大変気に入っていたようで亡くなる最後の数カ月でも、子供たちに求められればどこでも笑顔で「ゴメズ」になってあげていたらしい。映画の遺作は1994年公開の『ストリートファイター』ではあるものの、プエルトリコおよびラテンアメリカ出身の俳優の地位を向上させ、人々に愛されたゴメズとしての彼の勇姿を、本作は美しく残し続けている。

■放送情報
『アダムス・ファミリー2』
日本テレビ系にて、10月7日(金)21:00〜22:54放送
監督:バリー・ソネンフェルド
出演:アンジェリカ・ヒューストン、ラウル・ジュリア、クリストファー・ロイド、クリスティーナ・リッチ
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