仲間由紀恵が全うした“語り部”としての役割 優子の物語が『ちむどんどん』に深みを与える

『ちむどんどん』草刈正雄と仲間由紀恵の名演

「見捨てたんじゃない。必死に探していたけど、見つからなかった」

 優子だって、見捨てたわけじゃない。生死もわからない両親と姉の骨を、ずっとこれまでも探し続けていた優子。必死に探しているけど、まだ何も、見つけることができずにいた。そんな彼女が受け取ったのは、姉が両親にねだって買ってもらった宝物のジーファー。「最後を看取ってくださり、ありがとうございます」と、頭を下げる優子。

「生きているのか、死んでしまったのか、ずっとわからなかった。だけど、ようやく……本当に、ありがとうございます」

 ごめんなさい、帰ってきてくれて、ありがとう。そう泣きながらジーファーに想いを乗せて訴える仲間は、『ちむどんどん』において描かれるべき沖縄戦の傷跡や、沖縄人の想いを体現する“語り部”としての役割を最大限に全うしたと言える。

 その夜、歌子が歌い、優子が踊った曲は時恵の回想部分でも流れていた「浜千鳥」。寝ても冷めても忘れられない、我が親と過ごした日々と歌うこの曲を美しく、切ない表情で踊り切る仲間は幼少期から琉球舞踊に親しんでいた。師範昇格の登竜門にあたる新人賞をも受賞している名手としても知られており、その才能も遺憾無く発揮された本シーン。上白石萌歌の歌い上げも見事で、これまでの撮影期間で培ってきた民謡と三味線の成果が表れていた。

 草刈と仲間ら名優の演技合戦であると同時に、『ちむどんどん』が帰結するべき物語……戦争時に飢え、渇きを癒せなかった人々の無念が暢子の「食を共有する」物語に結びつく回だった。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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