『HiGH&LOW』は出演者全員が相乗効果で輝く一作に 役者・観客・製作者の“熱”の伝播
今回は、瀬ノ門工業高校の須嵜亮と天下井公平の関係性も、大いに観客を魅了した。特に、天下井は物語の負の部分を引っ張る、主要人物でもあり「悪役」である人物である。そして、誰が見ても「そんな奴になぜ、忠誠心を持ち続けるのか」と思わせるキャラクターであるにも関わらず、実は幼なじみだった須嵜の思いが、観客の心をわしづかみにした。
悪役を演じきった三山凌輝の経験値のある演技も説得力があったが、演技初体験にして、その切ない心のうちを、少ないセリフの中で表現した中本悠太の俳優としての可能性も大いに感じた。中本悠太が終盤に見せる表情とセリフは、何度観てもこみあげるものがあった。須嵜と天下井の関係性は、演技によっては、もっと陳腐な関係性にも見えたかもしれないが、ふたりのあの演技は、説明のつかない感情を十分にこちらに伝えていた。
そしてやはり、主人公の楓士雄や、司にも前回とは違う一面が見えた。楓士雄は、天真爛漫に、ライバルをどんどん自分の仲間に引き込んでいく魅力が爆発していたが、そんな中でも、自分のリーダー足り得るかという悩みを、珍しく吐露する場面もあった。その反対で、司は囚われの身になったりもするが、そんなことになっても、楓士雄を支える立場として、冷静に物事を見るという一面が際立つようになっていた(森崎ウィン演じる坂田基晃が焼く、期限切れの焼きそばを食べなかったことにも、それが表れているのかもしれない!)。
このように、今回の『THE WORST X』もまた、外部から出演した新キャラクターも、これまでの活躍の蓄積で深みを増したキャラクターも、皆がそれぞれに最大限に魅力的に演じることで、全員がその相乗効果で輝く映画になっていた。
そのほかにも、鈴蘭男子高校の面々も魅力的すぎたし、LDHの中でもドラマやバラエティにも力を入れてきた、藤原樹、長谷川慎、陣、八木勇征、木村慧人なども『HiGH&LOW 』に初参加した。これだけの濃いキャラクターが映画の中にひしめいていても、ひとりひとりの印象がしっかりと焼き付いている。そのすべてのキャラクターたちがさらに活躍する続編も期待したい。
■公開情報
『HiGH&LOW THE WORST X』
全国公開中
企画プロデュース:EXILE HIRO
総監督:二宮”NINO”大輔
監督:平沼紀久
アクション監督:鈴村正樹
原案・キャラクター設定:髙橋ヒロシ
脚本:増本庄一郎、渡辺啓、平沼紀久
音楽:中野雄太
出演:
【鬼邪高校】川村壱馬、吉野北人、佐藤流司、神尾楓珠、福山康平、龍、鈴木昂秀、うえきやサトシ、中島健、森崎ウィン、前田公輝
【鳳仙学園】塩野瑛久、葵楊、小柳心、荒井敦史、坂口涼太郎
【瀬ノ門工業高校】中本悠太(NCT)、三山凌輝(RYOKI)、永沼伊久也、比嘉涼樹
【鎌坂高校】藤原樹、岡宏明
【江罵羅商業高校】長谷川慎、陣、今村謙斗
企画制作:HI-AX
配給:松竹
©2022「HiGH&LOW THE WORST X」製作委員会©髙橋ヒロシ(秋田書店) HI-AX
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